展覧会のフライヤーを見てうっかり誤解している向きがあるようだが、フライヤーの白っぽい面に印刷されている、コンチネンタルギャラリーの展覧会のほうが、「プラスワン」の「本展」である。カラー写真が印刷されている面は、今回、美術評論家の柴橋伴夫さんが名乗りを上げて企画した関聨企画であり、「プラスワン」のメンバーに3人を追加して、3会場で展開されるものである。
さらにつけくわえるならば、フライヤーの「裏面」に書かれている日付は、企画のスタートから終了までの期間であり、このあいだに各会場に行けば見られるという意味ではない。各会場で微妙に開催機関がずれているのだ。四つの会場すべてで鑑賞できるのは、8月12-16日の5日間だけである。筆者はべつにフライヤーの制作者を責めているわけではないのだが、あらためて注意していただきたい。
4会場を一気に写真で紹介する。
いちおう公平を期すために、大型の写真は4会場トータルでひとり1枚とした。
藤本和彦「縁、向こう側、こちら側」(左)、千代明「無意識の領域」。
藤本作品は、どこか伝統的な習俗を思わせる。七十数カ所に白い布を結わえているせいかもしれない。
千代(せんだい)作品は、シャープなかたちが10個並んでいるが、近づいて見ると、中央部にはドローイングを思わせる曲線が盛り上がっている。
齋藤周「過程のゆらぎ」。
齋藤作品は、小さなパネルをいくつも連ねるという方法論は変わらないものの、人体を線描した要素が減って、さまざまな色をペインティングした部分が多くなった。
コンチネンタルギャラリーの中央の小部屋に連なるインスタレーション的な構成となっており、小部屋部分には、床の上に川内倫子の写真集などの本が積み上げてあったり文房具が置かれていたり、壁には色付きの紙テープが張られているなど、絵画以外の要素が増えている。
谷口明志「無題」。
線が支持体から離れて自立し会場空間を自在に往還する谷口作品。
自在に、といったのは、言葉の遊びではなく、ほんとうに各部分を動かせるようになっている。
以前は紺だったが、今回は群青に近い。
といって、青が薄くなると、現実の水の流れを聯想させてしまうので、あまり水色っぽくはするつもりはないという。
坂東宏哉「earth(流れ)」。
支持体が曲面となり、天井からつるされている。
モデリングペーストのようなもので表面に凹凸がつけられており、あたかもマティエールだけで絵画を成立させようとしているかのようだ。
田畑卓也「overflow」。
田畑作品は、谷口氏以上に、細い線が空間に自立して、奥行き感を表現しようとしている。
彼の意識では、これも「キュビスム以後の絵画」ということになるんだろう。
ダム・ダン・ライ「La.La.LA」。
プラスワンのメンバーの中で彼だけが絵画から作品を発想していないような気がするのは、筆者だけだろうか。
新聞紙やチラシをひねったりねじったりして作った人形は、遊び心に満ちている。両腕を挙げているので、動感もある。ただし、顔の部分だけが妙にリアルで、不気味さを漂わせている。
聞くところによれば、飲み会の席で誰かがたわむれにやっていた遊びから着想を得たとのことらしく、このへんの腰の軽さは、いかにも彼らしい。
絵画のありかたを追求しているうちに平面性から大きく逸脱してしまったのではないか-というのが、このグループに対して筆者が抱いているイメージである。もちろん、その逸脱ぶりは、好ましいものである。2次元と3次元というのはおそらく、永遠にしっくりと落ち着かない関係であり、彼らの模索もほとんど際限がないのだろう。
のこる3会場についても、順次アップしたい。
なお、各作家の過去の発表へのリンクについては、3本のエントリを参照のこと。
2009年8月7日(金)-16日(日)10:00-19:00
コンチネンタルギャラリー(中央区南1西11 コンチネンタルビル地下 地図C)
●PLUS 1 +柴橋伴夫企画 空間の触知へ-連鎖の試み 千代明 秋山一郎 齋藤周
=2009年8月4日(火)-16日(日)10:30-22:00(日曜-20:00)、期間中無休
ト・オン・カフェ(中央区南9西3 マジソンハイツ)
●PLUS 1 +柴橋伴夫企画 空間の触知へ-連鎖の試み 藤本和彦 澁谷俊彦
=8月12日(水)-17日(月)10:00-19:00(最終日-17:00)、ギャラリー創(中央区南9西6 地図F)
●PLUS 1 +柴橋伴夫企画 空間の触知へ-連鎖の試み 谷口明志 坂東宏哉 大島潤也 ダム・ダン・ライ
=8月11日(火)-23日(日)10:00-19:00(最終日-17:00)、月曜休み、ギャラリーエッセ(北区北9西3 地図A)
□グループ・プラスワン http://plus-one.ciao.jp/index.html
■PLUS1 groove(07年8月)
■グループ・プラスワン展(06年)
■5th グループ・プラスワン(04年)