教育研究予算は7割に減る

中期財政フレーム

概算要求の時期になり大学の運営交付金の大幅減を要求されている事が明らかになり大騒ぎ.日経に東大の浜田純一学長が寄稿されている。

 今、大学関係者は、愕然(がくぜん)とした思いで政策の動向を見守っている。その震源は、2011年度概算要求を前にして、政府が6月に発表した「中期財政フレーム」である。

致命的な打撃

 この中に大学予算への直接の言及はない。しかし、11年度から3年間、社会保障費の自然増は一般歳出の中で対応しつつ歳出規模を10年度並みに維持することなど複数の前提条件を考えると、蓋然(がいぜん)性の高い道筋が透けて見える。政府予算のうち義務的経費に分類されないすべての予算(そこには大学予算も含まれる)に対し、単年度で約1割、3年間で約3割もの削減が一律に課される恐れである。

このもとになる「財政運営戦略」は選挙直前の6/22に閣議決定されたもので、財政運営の危機的状況を指摘して、今後3年間は厳しい歳出抑制を行うとある.

http://www.kantei.go.jp/jp/kakugikettei/2010/100622_zaiseiunei-kakugikettei.pdf

 この文書に具体的な施策については触れられておらず、国会閉会後であった事もあり選挙参議院選挙に打ち消されて大きな話題にはならなかった.しかし概算要求の際に財務省による整理を行うと年金・医療の自然増を補うためにそのほかの予算は一律10%近く削ると各省に通告し大騒ぎになった.このスキームを実行すると充当する財源の用意できない予算は実行できない事になり民主党マニフェストの目玉の多くは実行不可能になる.菅首相は消費税発言で目くらましして選挙の話題からそらす事に成功した.

 この削減が3年間続くと教育研究費は7割近くまで減る.今後の揺り戻しでどこまで行くかはわからないが、昨年の仕分けで問題にされた削減額を遥かに上回る減額が国会や公の議論なしに行われる事になる可能性が高い.

 思い切った財政削減には一律カットした上で個別折衝で復活させる方法がよいと阪大の大竹文雄先生が指摘されているが、これが現実にはじまったことになる.おそらくあちこちで復活の裏交渉がはじまってはいるだろうが.

 昨年の仕分けの時と大きく違うのは今回は特定の事業を標的にはしていないのでまとまった反対運動を組織しにくいという事情がある.スパコンがシンボルになって世論が大きく振れた昨年の教訓をふまえた動きなのだろう.

 政府と財務省が悪いと非難する事はできるがそれで財政問題が解決する訳ではない.現実的には研究予算が三年後に7割に減るという現実的な予想に想像力を働かせて、それに対応した体質改善は避けられない.