科学・政策と社会ニュースクリップ

科学政策や科学コミュニケーション等の情報をクリップしていきます。

国立大学法人の危機

昨年の事業仕分けを思わせるような事態だ。

今週のメルマガ用に集めた情報の一部がこれだ。

●「運営立ちゆかない」と交付金減反対 北海道内の7国立大学長が共同声明
http://sankei.jp.msn.com/life/education/100716/edc1007162306004-n1.htm

平成23年概算要求基準(シーリング)に関する、道内7国立大学学長による共同声明 -
http://www.hokudai.ac.jp/shinchaku.php?did=594

●「大学予算削らないで」 国立・私立大学団体が共同声明
http://www.asahi.com/edu/news/TKY201007140570.html

交付金927億円削減「国の将来危うく」 国・私立大側が共同声明
http://sankei.jp.msn.com/life/education/100714/edc1007142358001-n1.htm

●大学予算削減は致命的/国大協と私大連が共同声明
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik10/2010-07-16/2010071601_02_1.html

●社団法人 国立大学協会 <「新成長戦略」の原動力は「強い大学」(国大協・私大連合共同アピール)を発表(7/14)>
http://www.janu.jp/whatsnew/entry_212.html

●927億円もの交付金カット 国立大学崩壊します/学長ら緊急声明 続々
http://www.jcp.or.jp/akahata/aik10/2010-07-15/2010071501_03_1.html

交付金削減は重大な影響 県に支援求め要望書
岩手大藤井学長
http://www.iwanichi.co.jp/ken/item_19313.html

●大学運営に重大な影響 交付金削減で岩手大学長要望
http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20100715_2

平成23年概算要求基準(シーリング)による
国立大学法人運営費交付金」の削減反対!!(共同声明)
http://www.tsukuba.ac.jp/up_pdf/20100713134401.pdf

●財政健全化で予算大幅減なら… 大学システム崩壊招く 「強い人材」育成に投資を 東京大学学長 浜田純一
日本経済新聞 2010年7月19日朝刊

先週号にも以下の記事を紹介している。
中国地区国立大学長が共同声明を発表
http://ds22.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~www-yu/cgi-bin/topics_event/2010/topic100709.cgi

共同声明【PDF】
http://ds22.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~www-yu/cgi-bin/topics_event/2010/file/100709-1.pdf

参考資料【PDF】
http://ds22.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~www-yu/cgi-bin/topics_event/2010/file/100709-2.pdf

8%の概算要求シーリング阻止のために国大協が行動開始 (東京大学職員組合
http://www.ne.jp/asahi/tousyoku/hp/1007unneihi-siryopagehtml.htm

国立大学法人32大学理学部長会議 緊急声明
“人財”養成と学術研究の中心である大学への支出は
我が国の繁栄を実現するために必須
平成22年7月10日
国立大学法人32大学理学部長会議
http://www.s.u-tokyo.ac.jp/info/statement.html

何が起きているのか。

大学関係者ならいわずもがなだが、簡単に振り返りたい。

発端は、政府が6月22日に閣議決定した「財政運営戦略」
http://www.kantei.go.jp/jp/kakugikettei/2010/100622_zaiseiunei-kakugikettei.pdf

だ。この中で以下のようなことが述べられた。

「財政健全化目標の達成に向けて、平成23 年度から平成25
年度において、「基礎的財政収支対象経費」(国の一般会計歳
出のうち、国債費及び決算不足補てん繰戻しを除いたもの)
について、恒久的な歳出削減を行うことにより、少なくとも
前年度当初予算の「基礎的財政収支対象経費」の規模(これ
を「歳出の大枠」とする。)を実質的に上回らないこととし、
できる限り抑制に努めることとする。」

 これを受けて、国立大学協会(国大協)が試算したところ、「政策的経費」は年率8%の減となることが明らかになった。

 これを国立大学法人の運営費交付金や私立大学等経常費補助に適応されれば、削減額は単年度で1,185億円(国立927 億円、私立258 億円)に達するという。

 国立大学法人の927億円の予算は、大阪大学九州大学の予算に匹敵し、また、小規模の大学27校分に匹敵するという。

 これを学生の授業料の上昇で賄うと考えると、学生一人あたり23万円の値上げになるという。

 まさに、高等教育の危機と呼べるような事態だ。

 この事態は大学関係者を動かした。連日のように、大学関係者から声名が発表されている。大学の学長自身の声名も多く、とても追い切れないくらいだ。

 昨年の事業仕分け直後を思わせるような事態だ。

 ところが、昨年とは違う点も多い。

 まず、動いているのが大学の学長だということだ。大学の経営にかかわらない教授や、昨年動いた学生、ポスドクなどの動きは見えない。

 また、声名の内容は、昨年以上に政府に向いている。政府の方針に対する異議であるから、それは当然なのだが、市民や一般の学生、教員がおいてきぼりにされているような感じが無きにしも非ずだ。

 これは、国立大学法人化直前に似ているように思う。

 あの時も、大学関係者が危機感を持ち、反対運動を展開したが、世論を巻き込むことができなかった。

 今回、有力大学の学長がロビイングすることによって、この危機は収まる可能性はあると思うが、それでは本質的な解決にならない。twitterなどでは、27の大学を潰してしまえ、阪大、九大を潰してしまえ、という声さえ聞かれる。

 世論を納得させられない限り、「国立大学はいらない」「民営化しろ」という声はなくならない。現に選挙で自民党みんなの党が東大、京大の民営化について触れている。

 今は政府に向けて行動する緊急事態なのかもしれないが、社会に対し、納得する説明をすることが、大学関係者に求められているのではないか。

 折しも、英国でも研究が危機に陥っている。

●'Game Over' for British Science?
http://news.sciencemag.org/scienceinsider/2010/07/game-over-for-british-science.html

Value-adding enterprise
英国では、新政権の厳しい財政再建策のもとで、研究者たちも、科学の価値を明確に示すこと
が求められる。
http://www.nature.com/nature/journal/v466/n7304/full/466296a.html

 経済危機を乗り越え、次世代に研究を引き継ぐために、関係者の独りよがりでない行動が求められている。