日本の専門家がみるノーベル物理学賞2氏の功績
ナノテクノロジー(超微細技術)がもたらす炭素材料は、日本の研究水準も高い。日本の専門家3氏に聞いた。
1991年に筒状炭素材料「カーボンナノチューブ」を発見したNECの飯島澄男特別主席研究員(名城大学教授)。カーボンナノチューブは、グラフェンを筒状に丸めた構造をしている。飯島氏の業績もノーベル賞級と評される。
飯島氏は「鉛筆の字をよく見るとたまたま小さなグラフェンの破片があり、これを調べてみようという発想がすごい」と今回の受賞を称賛する。
一方で「もしカーボンナノチューブで受賞するとしたら、以前受賞のフラーレン(球状炭素分子)と同時もありえた。今度はグラフェンと一緒かと思ったが、また振られてしまった」と胸の内を明かす。
また「グラフェンの研究は、ガイム氏らの最初の論文からわずか数年。受賞は2~3年先かと想像していたので驚きもある。応用の可能性よりも、物質表面の現象を解明した成果が評価されたのだろう」と語る。
炭素材料のナノテクノロジー(超微細技術)研究に詳しいフラーレン・ナノチューブ学会会長の篠原久典・名古屋大学教授は「グラフェンにノーベル賞が与えられるとしたらこの2人であることはだれもが認める」と話す。
と言いつつも「炭素の代表的なナノテク素材には球状のフラーレンと筒状のカーボンナノチューブ、そしてシート状のグラフェンがある。フラーレンとナノチューブは日本人研究者の貢献が大きく、応用研究も日本で盛んに進んでいる。日本はグラフェンだけは出遅れた」とも指摘する。
理論物理学者で炭素材料に詳しい東京工業大学の斎藤晋教授は「物理学者の間ではグラフェンは発見前から注目されていた。私たちも02年にはグラフェンが存在すると仮定して半導体にする方法を理論計算していた」と打ち明ける。
「2年後に実際にグラフェンが見つかり、衝撃が走った。理論上の話が実験で確認できる。究極の省エネ半導体などが実現できる。さらに応用研究が加速するだろう」と説明している。
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