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 就職活動開始の学生諸君に贈る ― 就職活動への檄20箇条 2010年09月07日

就職活動も9月になって本格化してきた。私が学生の就職について思うところを20箇条にしてまとめてみた。お役に立つかな。学生諸君、頑張れよ。

【就職活動への檄(1)】
就職は、「自分の夢」「将来の夢」「自己実現」「能力の開花」に関わっているだけではない。自分自身が新たに築く家庭の家計の支えになることにも繋がっている。

【就職活動への檄(2)】
「夢」を実現しても生活ができなければ意味がない。特に最近は、共稼ぎをしても世帯年間収入が600万円を超えない家庭が多い。子供を妊娠・出産しなければならない女性が働くことを前提にしてもその程度の年収ということを真剣に考えている学生が少なすぎる。

【就職活動への檄(3)】
そもそも就職は「私の夢」を実現することではない。まずは自分を会社に買ってもらうわけだから(学費を払って授業を買うのではなくて、給料を貰うわけだから)、〈夢〉を語る前に、自分に何が「できる」のかをはっきりさせねばならない。しかもその「できる」は、自分が食べられるだけではなく、人(家族、特には自分の子供)をも食べさせる能力でなければならない。

【就職活動への檄(4)】
つまり〈就職〉とは、まだ見ぬ他人を納得させる能力を開花させる場所であるわけだ。これまでは、試験勉強が中心で担当教員を(カンニングをしてでも)納得させればそれで済んだが、就職試験はそうはいかない。別の難しさがある。

【就職活動への檄(5)】
試験官は、背後にいる何億もの顧客を想定してあなたの前に立っている。また、数十年後会社のリーダーになって何百人、何千人、何万人ものリーダーになれるかどうか、多くの社員に尊敬される人間になれるかどうかを見ている。その点をあなた達は忘れがちだ。

【就職活動への檄(6)】
その点を忘れているあなた達は就職ノウハウ本に頼る。ノウハウ本で就職できるような会社は直ぐつぶれる会社。何もできない、何も勉強してないバカな自分を入社させてくれる会社は、それ自体がバカな会社だ。なぜ冷静にそう考えられないのか。

【就職活動への檄(7)】
背後に多数の顧客、多数の社員を有している会社は、ノウハウではなくて、あなたの根性(別名:コンピテンシー)を見ている。根性だけが、他人を動かすことができる。根性だけが未来を切り開くことができる。根性だけが世界を動かすことができる。

【就職活動への檄(8)】
しかし〈根性〉は、努力主義ではない。それは〈素性〉と言われているものに近い。親子関係も地域も学校も友だちもあなたの〈根性〉を培ってきた。その根性をもって、あなたは世の中に飛び立とうとしている。

【就職活動への檄(9)】
そんなあなたの〈根性〉は何か。〈根性〉には〈表情〉がある。それは性格のプラマイを相殺した絶対値のようなものだ。「性格」なんてどうでもいい。長所は短所、短所は長所だから。そうではなくて、何が自分と他人とが違うところなのかということだ。二十歳を超えた人間が初めて問える問いだ。

【就職活動への檄(10)】
〈根性〉は、どんな人間にも備わっている。親との関係、地域との関係、友人との関係、学校との関係、趣味やアルバイトの経験などなど、自分が20年以上も生きてきて、(無意識にも)形成されてきたものを今こそ冷静に掘り尽くすことだ。そここそを面接官は見ている。

【就職活動への檄(11)】
「自分の個性」「自分の特長」などと思っているものは、大概のところ「個性」でも何でもない。高度な24時間情報社会に生きるあなたたちの「個性」や「特長」ほどくだらないものはない。携帯メール、ミクシィ、Twitterによって24時間outputばかりしているあなたたちにどんなストックがあるというのか? 面接官がそれらの個性について二つ三つと質問するともう何も言うことがなくなるほどの薄っぺらな個性に過ぎない。自分の語った言葉や事態さえ、満足に説明できないあなたたちの「個性」「特長」って何?

【就職活動への檄(12)】
そのように、大概の「個性」は月並みなものに過ぎない。「適性にあった就職を」とバカなキャリアカウンセラーは言うけれど、そんな「適性」など存在しない。社会とは、自分が〈変化〉できる場所。だから奥が深い、楽しい。そんな新しい実社会に、薄っぺらでできあいの個性や適性を持ち出しても意味がない。

【就職活動への檄(13)】
あなたたちのこれまでの勉強は、〈努力〉すれば先が見えるという性格のものだった。つまり〈累積〉がものを言う世界だった。でも、実社会は、〈累積〉では仕事ができない。「予習」や「復習」が効かないのが実社会というもの。いつも〈変化〉を迫られている。だから〈努力〉では就職はできない。就職ができないだけではなく、〈努力〉では〈仕事〉ができない。

【就職活動への檄(14)】
私の言う〈根性〉とは、そんな変化を担ったり、変化に耐える能力のことだ。些細であるとはいえ、あなたたちの20年以上の経験の中にも、親が亡くなる、身体を悪くする、友だちと大げんかする、親友に裏切られる、失恋をする、親に大きな嘘がばれるなどなどの〈変化〉があったに違いない。そのときあなたはどうした?

【就職活動への檄(15)】
そんな〈変化〉に見舞われたとき、あなた方のストックは、ほとんど役立たずで絶望に見舞われたに違いない。自己嫌悪にも陥ったに違いない。そのとき、何がその〈変化〉を支えたのか。それが、私の言う〈根性〉。

【就職活動への檄(16)】
大概の日本の若者は、こういった〈変化〉を受験勉強で経験している。受検勉強は、累積型の努力主義だが、年に1回の試験で合否が決まるという集約性(偶然性)が、大きな〈変化〉の体験になっている。成熟した日本の学生の〈根性〉形成は、実生活の変化よりは、〈大学受検〉なのである。

【就職活動への檄(17)】
学歴偏差値の序列は、無体験な日本の学生を徹底的に孤独に追い詰めることによって〈根性〉形成に寄与している。〈根性〉に偏差値は相関している。「学歴は問わないが、ふたを開けてみれば名門大学だった」というのはその意味でのことだ。大概の一流企業の人事は、毎年そんな経験を繰り返している。

【就職活動への檄(18)】
情報社会に包囲されている若者ではあるが、大学受験の一回性は、この高度情報社会(交換と代理だらけの社会)での唯一の身体性。その身体性の根性を企業は見ている。だから、高学歴と一流企業就職とは一致している。

【就職活動への檄(19)】
さて、あなたが、たまたま高偏差値、あるいは高学歴でもない場合にはどうすればいいのか。重要なことは、しかし高偏差値・高学歴自体ではなく、それに伴う〈根性〉なのだ。あなたの根性をどこで見出すのか、それが就職活動の鍵を握っている。〈受験勉強〉の代わりにあなたの根性探しをしなくてはならない。

【就職活動への檄(20:まとめ)】さて、従って、就職活動とは、面接官を通過することではなくて、自分の〈根性〉を見出すことです。〈根性〉とは一言で言えば、自分の子供や年老いた親を食わせる能力のことです。バカほど「自分の夢」を語りたがります。しかし能力とは他人を養う力のことを言うのです。そのことを踏まえた根性探しをしましょう。それが就職活動の成否の鍵を握っています。→「にほんブログ村」

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投稿者 : ashida1670  /  この記事の訪問者数 :
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感想欄

ご無沙汰しています。

最近こちらでは、読み物らしい記事が少なくて、遠ざかっていました。久しぶりに立ち寄ってみて驚きました。これは、すごい就職活動指南だと。

今朝も通勤電車で見かけた広告に、某専門学校の「なりたくない自分になるな」という宣伝コピーが踊っていました。現在の若者の、就職は自分のために、自分を基軸にして行うものという錯誤をよく見透かしていると思います。

芦田様の「<根性>」概念からすれば、就職活動の出発点は、自己の外部にいる他者のために(に対して)、自分は何ができるか(言えるか)を自問することでしょうか。思わず私自身、自問自答してしまいました。

記事の内容、良く理解できていないコメントでしたら、ご容赦ください。

また立ち寄らせていただきます。

投稿者 通りすがりの閲覧者 : 2010年09月07日 18:54

もう、久しぶりじゃないですか。

仕事柄、ツイッターできないし、ほんと、しばらく楽しみが減っていた。

ほんとうに、こういうのまた頼みますよ。

古くからのファンより

投稿者 大森 : 2010年09月07日 23:09

>閲覧者さん

「好きを仕事にする」とかのキャッチもよく踊っていますよね。こういう学生迎合型の教育が、人材育成に失敗する一番の原因だと思います。なんとかしようとおもっています。


>大森さん

毎日書いてるんですがね。外部原稿が増えて、直接アップできないのがツライ。でも頑張ります。見捨てないで(笑)。

投稿者 ashida : 2010年09月08日 15:39

芦田先生、

先生のこれまでの原稿を読ませていただいて、その多くに同感しているものです(先生の式辞もすごく好きです)。

私も理系大学教員になって約6年になりますが、先生のいう「根性」が結局のところ「ものを言う」と感じております。

近年、少子化から大学全入時代に突入して、ますます学生がお客様化していく中、どのようにその根性の大切さを学生に教えていくのか、日々悩んでおります。

先生の書かれたこのような記事を学生にも読ませたいと思っています。

これからも楽しみにしています。

今回の秀作に思わずコメントを入れてしまいました。

投稿者 悩み続ける大学教員 : 2010年09月09日 08:10

本業とは別にキャリアカウンセラーをしながら、中学生にキャリア教育の授業をしたり(ボランティアで)しております。

そこで、いつも私が言っているのは、「好きなことを仕事にするんじゃない。仕事を好きになるんだよ」ということです。子どもたちはわかってくれる子もおりますが、教員がわかりません。

「好きなことを探そう」「夢をかなえよう」みたいな話から、すぐに「職種」「会社」へと短絡した話に持って行ってしまいます。

小中学校の先生は「先生になりたい」といって夢を?かなえた希少種なので、なんとなく入った会社で鍛えられて仕事を好きになっていくということがわからないんだろうなあ、といつもジレンマを感じております。

たいへんいい記事でした。ありがとうございました。

投稿者 ともこ : 2011年09月08日 11:15
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