本当に胸がつぶれる話

Bones,Daily Science,Sketches — yam @ 7月 2, 2010 1:30 am

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「肋骨のはたらきは?」と聞かれると、多くの人は「内蔵を守る」と答えるでしょう。しかし、そうすると大切な臓器の大半が、やわらかいおなかにあるのも不思議です。もちろん心臓を保護する役割も果たしているのですが、実はもっと重要な機能があります。それは呼吸です。

肋骨は後方で背骨につながり、前方では胸骨につながっており、全体としては前後2本の縦棒の入った提灯のような構造になっています。左上の図は人の胸郭の簡単なモデルです。連なるリングが肋骨、右側の長い縦棒が背骨、左の短い棒が胸骨。内部に風船のような「肺」をおいてみました。

一見がっちりした構造に見えますが、実はそれぞれリングと前後の縦棒は、一種の関節になっていて、角度を変えられるように、つながっています。

ここで胸骨にあたる短い棒を下に動かしてみましょう。すると連なったリングは一斉に左下がりに傾きます(左下図)。その結果、胸骨は背骨に近付いて風船をつぶします。ずらりと並んだ柱が一斉に倒れて、建物が一方向に倒壊するのと同じですね。胸骨を上に引っ張ってリングを引き起こすと、最初の状態に戻って肺が空気を吸い込みます。

実際にはこの動きは小さなものなので、胸がつぶれるように見えることはありませんが、仰向けになったまま、大きく息を吸い込むと胸が、あごの方に向かって移動しながら、せり上がってくるのを確認することができます。一見頑丈な建築物のように見える肋骨は、呼吸のたびに倒れたり起き上がったりを繰り返しているのです。人の体って不思議ですね。

少し構造は違いますが、最近テレビにも登場するようになった土佐さんのWahha Go Goも、ふいごの肺を持っています。それがせり上がって空気を吸い込むのは、なかなか見事なアナロジーです。

3 Comments »

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  2. いつも、面白く拝見しております。

    私は、つい2ヶ月ほど前に肋骨が折れてしまいとても苦労いたしました。デザインと設計というより実体験からとても興味深かく、かつ共感しながら拝読いたしました。

    骨折直後はなんか打撲かなぁ〜くらいの軽い痛みだったのですが、、半日あとくらいから内蔵がひっくり返るような波打つような痛みがでました。これもきっとふいご構造と関係あったのでしょうね。

    その後ははクシャミが一番痛かったのですが、深呼吸をしたり、ちょっと踏ん張っていきむのも、なんでも横隔膜の上げ下げに関係しているものはとても辛かったです。呼吸して酸素を身体中にに巡らし、また胸を上下してリンパ液を循環させている役割も持つ肋骨は大変な大事なところだと思い知りました。

    本当に人の身体は不思議です。

    失礼いたしました。

    コメント by satoko tabata — 7月 2, 2010 @ 2:05 am
  3. satoko tabataさん

    初めまして。
    私は、幸いにしてまだ肋骨を折った事がないのですが、相当つらいご様子ですね。
    そんな中、とても参考になる実体験をレポートしてくださり、ありがとうございました。
    回復をお祈り申し上げます。

    コメント by yam — 7月 5, 2010 @ 1:04 pm

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