WEB月刊競輪世界選レポート(5日目)
 
第6報 【3月28日】  

 2010年世界トラック選手権自転車競技大会の最終日は現地時間の28日、デンマーク・コペンハーゲン近郊のバレラップスーパーアリーナで男女4種目が行われた。日本からは盛一大(27=愛三工業レーシングチーム)が男子オムニアムに出場し、最下位の18位に終わった。女子ポイントレースではタラ・ウィッテン(カナダ)が、女子ケイリンではシモナ・クルペクカイテ(リトアニア)が優勝を飾った。大会のラストは男子スプリントで、グレゴリー・ボージュ(フランス)がシェーン・パーキンス(オーストラリア)を下して優勝、昨年に引き続いて同種目を制した。
  【男子オムニアム】

 自転車の混成競技で、今大会はフライングスタートの200メートルタイムトライアル10000メートルスクラッチ3000メートル個人追抜15000メートルポイントレース1000メートルタイムトライアル-の5種目。2012年ロンドン五輪で新採用されるため、中長距離種目の有力選手が多数出場した。
 一層レベルが上がった種目に挑んだスクラッチ銅メダリストの盛一大(愛三工業)は最下位の18位に終わった。「タイム競技はごまかしがきかない。走ったことがない個人追抜とか1000メートルタイムトライアルで自分がどれぐらいの位置か確かめたい」と話していたが、個人追抜と1000メートルタイムトライアルはいずれも最下位で世界との差を痛感させられた。

200メートルタイムトライアル
 周回をして勢いをつけてからスタートする種目で、トップスピードの高さが試される。盛は11秒145で15位。トップのエドワード・クランシー(イギリス)は10秒448だった。
スクラッチ
 純粋に着順だけを競う得意種目だが、まさかの13位。中盤で逃げに出遅れて1周遅れとされて窮地に。終盤に巻き返しを狙って3人集団で仕掛けたが、主集団をとらえることはできなかった。「エンデュランスのスクラッチとはまったく違うレース展開だった」と戸惑いを隠せなかった。
個人追抜
 果敢に攻めるも最終周回はスタミナが切れて3分33秒432にとどまった。今大会の個人追抜(4000メートル)を制したテーラー・フィーニー(米国)が3分16秒864で貫禄勝ちした。
ポイントレース
3度目のポイント獲得周回(計6度)で3位に入って2点を獲得するのがやっと。4レース目の疲労で、いつものように仕掛けることができなかった。「あれが精いっぱい。きつい」。1人だけ主集団に2周差をつけたティム・メルテンス(ベルギー)がスクラッチに続いて1位を獲得した。
1キロメートルタイムトライアル
 最後の力を振り絞ったが、1分8秒369。1位となったエドワード・クランシーとは6秒以上の差が開いた。

男子オムニアム 盛一大選手  
男子オムニアム
盛一大選手
男子オムニアム エドワード・クランシー選手 男子オムニアム 表彰式
男子オムニアム
エドワード・クランシー選手
男子オムニアム 表彰式

 盛は「基本的なレベルが違う。タイム競技で上位にこないとまったく駄目な競技だから、パワーをつけていかないと勝負にならない。タイムトライアルで強いと(順位やポイントを争う)競争でも自分に有利に走れる。」と課題を口にした。世界の大きな壁にぶつかり、折れそうになる気持ちを必死に奮い立たせ「やったことがなかったので、レースで戦えたことは収穫。今は厳しい状態だが、これをスタートにしたい」と前を向いた。
 優勝は200メートルタイムトライアルと1000メートルタイムトライアルで1位になったエドワード・クランシー。スクラッチ以外の4種目を1けた順位にまとめ、前年優勝のリー・ハワード(オーストラリア)を順位点8差で退けた。タフな5レースを終え「吐き気がする」とおどけた新王者は「オムニアムは大変。まだまだ経験が足らない」とさらなる向上を誓った。

 
  【女子ケイリン】 

 シモナ・クルペクカイテ(リトアニア)が決勝で約1周半逃げ、まくりを狙ったビクトリア・ペンドルトン(イギリス)の強襲をかわした。前回大会の500メートルタイムトライアルを制したクルペクカイテは今季、スプリントとケイリンで金メダルをつかむために練習を積んできたという。前日のスプリントは3位止まりだっただけに、この日の勝利は格別だった様子。「うれしくてしょうがない」と息を弾ませた。レース後は黄緑赤のリトアニアの国旗を振りながら、にこやかな笑みを浮かべて場内を1周した。
 前日のスプリントで4連覇を達成した女王ペンドルトンは準決勝で鮮やかなカマシ先行を決めるなど、抜群の勝負勘で危なげなく勝ち上がってきたが、決勝は最後まですばらしいスピードを保ったクルペクカイテに屈した。

女子ケイリン  
女子ケイリン
女子ケイリン リトアニア国旗を掲げるシモナ・クルペクカイテ選手 女子ケイリン 表彰式
女子ケイリン リトアニア国旗を掲げる
シモナ・クルペクカイテ選手
女子ケイリン 表彰式
 
  【女子ポイントレース】 

 250メートルのトラックを100周し、10周ごとに通過上位選手がポイント(1位5点、2位3点、3位2点、4位1点)を得る25キロメートルの長距離レース。24人によって争われ、コンスタントに得点を重ねたタラ・ウィッテン(カナダ)が36点を獲得して優勝、2日目に行われたオムニアムに続いて2冠を達成した。9度目のポイント周回で5点を取ったのが効き、2位のローレン・エリス(ニュージーランド)とは3点差。「力をふりしぼって一生懸命に走った。ラスト2回のポイント周回にすべてをかけた」とタラは笑顔で振り返った。

女子ポイントレース 女子ポイントレース 表彰式
女子ポイントレース
女子ポイントレース 表彰式
 
  【男子スプリント決勝】 

 昨年の覇者グレゴリー・ボージュ(フランス)とシェーン・パーキンス(オーストラリア)が対戦した。1回戦ではパーキンスがボージュを出させずに先行。ボージュは2周回のバックストレッチで仕掛けたが、合わせられるや下げて差しにまわった。ゴール寸前できっちり追い込むと、ガッツポーズを繰り返した。
 2回戦ではボージュが前に出た。後ろを牽制しつつ、ゆっくりと1周回をまわる。パーキンスはホームストレッチで内から抜け出て主導権を握った。3車身ほど離されたボージュは最終周回バックストレッチで追いつき、前を射程圏に入れる。直線で前をかわすと、右手を突き上げて勝利をアピールした。
 引き揚げてきたボージュは「今回はクリス・ホイをはじめイギリス勢を強く意識してきた。スプリント決勝では、勝つと決めて集中して走った。フランスチームの一員として勝てたことがうれしい」と話し、喜びをかみしめた。

男子スプリント 男子スプリント グレゴリー・ボージュ選手
男子スプリント 男子スプリント
グレゴリー・ボージュ選手
男子スプリント 両手を挙げて優勝を喜ぶグレゴリー・ボージュ選手
男子スプリント 表彰式
男子スプリント 両手を挙げて優勝を喜ぶ
グレゴリー・ボージュ選手
男子スプリント 表彰式
 
  【総括】 

 クリス・ホイが復帰してイギリス勢が流れを呼び戻すかと思われたが、勢いはオーストラリア勢にあった。男女合わせて6個の金メダル、銀と銅がそれぞれ2個で合計10個のメダルを獲得。中長距離ではキャメロン・マイヤーが男子マディソンと男子ポイントレースを制する大活躍だったが、女子チームスプリント優勝やアナ・ミアーズの女子500メートルタイムトライアル優勝など短距離系における躍進も印象づけた。男子スプリント2位のシェーン・パーキンスは「若手がたくさん出てきて、いいチームになった。マンチェスター大会(08年)ではイギリスの独壇場だったが、それを追い越せるよう皆が頑張ってきた結果だ」と話していた。
 イギリスは金メダル3個に終わったが、それでも男子ケイリンではクリス・ホイが貫禄を示して優勝、女子スプリントではビクトリア・ペンドルトンが4連覇を達成、同種目5度目の優勝を飾り改めて存在感をアピールした。
 シモナ・クルペクカイテ率いるリトアニア勢の活躍も目を引いた。昨年の女子500メートルタイムトライアルで世界新記録(33秒296)を出したシモナは、同種目こそアナ・ミアーズ(オーストラリア)に屈して2位となったが、2日目のチームスプリントで銅メダルを獲得すると、4日目にはスプリントでも3位入賞、最終日にはケイリンで優勝して合計4つのメダルを手にした。ダッシュもさることながら、競走センスにも磨きがかかっている。
 日本は盛一大がスクラッチで3位入賞と大健闘。世界選手権における日本勢の表彰台は、93年ノルウェー・ハーマル大会の吉岡稔真(ケイリン3位)以来17年ぶりで、中長距離種目でのメダル獲得は五輪、世界選手権を通じて日本初という快挙だった。一昨年6位、昨年5位と着実にランクを上げての功績は、地道な努力の成果でもある。その盛はオムニアムにも出場、新たな課題にも積極的に取り組んでいる。オムニアムはロンドン五輪から新採用される自転車の混成競技で、今大会(男子)は200メートルタイムトライアル、10000メートルスクラッチ、3000メートル個人追抜、15000メートルポイントレース、1000メートルタイムトライアルの5種目で争われた。
 渡辺一成、新田祐大、浅井康太は、タイム競技で全く歯が立たなかった。今後については、中野浩一氏と阿部良二監督が意識改革を、班目秀雄総監督は適切なシステム構築を課題としている。

 中野浩一氏 「タイムを出す競技と日本の競輪に大きな違いはないんだよね。勝つためにすべきことは自転車に乗ることであって競技も競輪も一緒。競技は乗り方が違うといっても競輪で走っていれば対応できるレベルであって、そこに大きな修正は要らないだろう。準備期間についても言われてるけど、日本の競輪選手は1年中レースで走っているわけで、それだけでトレーニングになるんだから時間はたっぷりあるはず。負けるのは単に弱いからであって、いい結果を出せないのを環境のせいにしてはいけないね。それと選手は目的を明確にすべき。何のためにこういう舞台で活躍したいのか…つまり『何を目指したいのか』をね」

 阿部良二監督 「結果がすべてだから。やることはいろいろあったんだろうけど、やってみても大したことはできないんだよね。器械器具はあくまで補助であって、基本は人間の力なんだから。力があれば勝てる…ただそれだけのこと。環境についても言われるけど、何がいい何が悪いじゃなく、気持ちの問題でね。『なぜここにいるのか』『今、何をすべきか』を考えて自分たちは精いっぱいやってきたし、これからもそうしていくだけ。それは選手も同じでね、与えられた環境で最善を尽くすことが大事なんだ」

 班目秀雄総監督 「ごらんの通りで日本勢は厳しい現状にある。今までと同じことをやっていたのでは望みがないので、全く違うことをやるという発想も必要ですね。外国勢との差をどうやって埋めて、どう追いかけていくか…そのために何をすべきか。まずはわかっていることからやっていく。時間がかかる作業ですが、選手は限られた期間の中で戦うわけですから、何年単位という見方ではなく、例えば1年を3カ月に区切って短いスパンの中で結果を出していくのも1つのやり方。それと来年は新しい人材もチームに入ってくるでしょうから、その中からダイヤモンドや金や銀を探すという〝発掘〟も我々の仕事だと思っています」

 
~コペンハーゲンから~

みなさん、こんにちは!

世界選手権は、本日最終日をむかえました!


今日からデンマークは夏時間。サマータイムの始まりです。
みんな、時計の針を1時間進め、そして初夏の到来をお祝いします!

北欧の冬は日照時間がとても短いので、みんな夏が来るのを心待ちにしているんですね!


さて、今日注目の種目は、男子オムニアム。

日本からは、スクラッチで銅メダルを獲得した盛選手が出場。
レポートでお伝えしたとおり、最終的に18位という結果に終わりました。


このオムニアム、はじめて聞いた!という方も多いと思います。
2012年ロンドン五輪から、正式種目となったこの競技。

200メートルタイムトライアル、スクラッチ、個人追抜、ポイントレース、1000メートルタイムトライアル

以上の5種目すべてを走り、順位を争います。
しかも、1日ですべての種目をこなす、かなりハードな競技なんです!

スクラッチで銅メダルを獲得した盛一大選手  
スクラッチで銅メダルを獲得した
盛一大選手

本日をもって全種目が終わり、世界選手権は幕を閉じました。

盛一大選手がスクラッチで銅メダル獲得し、17年ぶりの表彰台へと上り、
日本にとって、とても明るい話題を提供してくれました。

次はいよいよ、2012年のオリンピックへ向けた戦いが始まります!
自転車競技からは、一瞬たりとも目が離せませんよ!

レースを終えた日本チーム お疲れ様でした!  
レースを終えた日本チーム
お疲れ様でした!

今回の世界選手権自転車競技大会
私にとって、自転車競技の国際大会は初めての経験でした。

世界の選手たちの走りを目の当たりにして感じたこと。
それは、自転車競技はやっぱりおもしろい!

人を魅了する。夢中にさせる。

そして、感動させる。


安直な感想で、怒られるかもしれませんが。

レースが始まり、いつも気が付くと夢中で選手を応援していました。
それは、日本人選手に限ったことではありません。

レースが終われば、会場が一体となって選手の健闘をたたえ、祝福する。
とても素晴らしいことだと思います。


時差と原稿の締切時刻と戦いながら、閉じそうなまぶたを開け、
レースの感動を日本のみなさんへお伝えすべく、
現地コペンハーゲンから、6日間にわたり世界選手権レポートをお届けいたしました。

その思いが、少しでもお伝えできていれば幸いです。


次回の世界選手権は、来年の3月にオランダのアペルドールンで開催します。

今後の日本チームの活躍に期待したいですね。
みなさんも応援よろしくお願いします!

それでは、長い間お付き合いいただき、ありがとうございました!


また来年お会いしましょう!さようなら!


最後に、このページのために撮っていた写真を載せておきますね。

デンマークTVクルー 気さくに話かけてくれました 大会最終日 お疲れの様子のペーサー
デンマークTVクルー
気さくに話かけてくれました
大会最終日
お疲れの様子のペーサー
実はここからレポートをお届けしていました! 大会が終わり、ひっそりと静まりかえったアリーナ
実はここから
レポートをお届けしていました!
大会が終わり、
ひっそりと静まりかえったアリーナ
コペンハーゲン中央駅 デンマークは、自転車専用道路が整備されていました
コペンハーゲン中央駅 デンマークは、自転車専用道路が
整備されていました
こちらも自転車用の通行帯です 自転車用のベビーカー
こちらも自転車用の通行帯です 自転車用のベビーカー
コペンハーゲンの街並み ホットドッグ屋のおじいさん「また来いよ!」と言ってくれました
コペンハーゲンの街並み ホットドッグ屋のおじいさん
「また来いよ!」と言ってくれました
 
 
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