ほとんどの人が、毎日いくつかのWebサービスを使っていると思いますが、Gmailほどあなたの個人情報を知っているものは無いのではないでしょうか。万が一Gmailに何かがあった時、Gmailアカウントに大量にあるデータやフォルダはどうなってしまうのでしょう? そこで今回は、クラウドのバックアップサービス「Backupify」が提案している、死後Gmailアカウントをどうするべきかの方法をご紹介します。Gmailアカウントに万が一のことがあった時の対策を考えていきましょう。

 オンラインサービスを通して作成した情報の保有権という意味で、データの所有権について語るべきことはたくさんあります。しかし、例えばGmailは、明らかに私のものだと分かるようなデータを管理するには、とても良いサービスです。問題は、自分が死んだ後も残るものなのかどうかでしょう。簡単に言うと、自分が死んだ時に家族がGmailアカウントを引き継ぐことができるのか? ということです。

この問いは言葉以上の意味を含んでいます。筆者は、数多くのオンラインサービスやアカウントを利用しており、それらの大事な通知はGmailアカウントに届くようになっています。Gmailのアカウントにアクセスしない限り、彼の妻は「Health Savings Account」や「Roth IRA」のアカウントには、おそらくアクセスできません。

突然の死に備えて、自分の家族に分かるように、自分のアカウントに関する委任状的なものや、パスワードなどの認証に必要なものを残しておくというのが、分かりやすいでしょう。問題は、Gmailユーザになりすます行為となるので、Gmailのサービス利用規約に違反することになります。Gmailになりすましが発覚することはないかもしれませんし、そういうことをしている人は多いでしょうから気にも留めないかもしれませんが、万が一、筆者の死後に妻が彼のアカウントにログインしていることがバレたら、Gmailの裁量によって彼のアカウントが凍結、もしくは削除される可能性はあります。多かれ少なかれそういう可能性がある限り、家族が自分のアクセスした時に起こりうる問題は未然に取り除いておきたいものです。

Gmailはサービスであり製品ではありません。よって、利用しているサービス自体を譲渡することはできないわけです。筆者が、Gmailのパスワードを妻に知らせる前に死んでしまったら、最後にログインした時から9ヶ月後に、アカウントは自動的に削除されます。筆者が妻にパスワードを知らせておいて、Googleが彼の妻のなりすましに気付かなければ、アカウントを消去される心配はありません。このことはさておき、少なくともGoogleは個人情報とその所有権について、よく考えられたポリシーを表明しています。

それでは、筆者が妻にGmailアカウントを遺言として法的に譲渡する方法はあるのでしょうか? これは一応「ある」ということになります。彼の妻は、彼の死後に彼のGmailアカウントのコンテンツにアクセスすることが可能です。しかし、控えめに言ってもかなり面倒くさい、以下のような法的な問題をクリアしなければなりません。

  • 生前に本人のGmailのアカウントからメッセージを受け取っていること。
  • 本人の死亡証明書のコピーがあること。
  • 裁判所が筆者の妻に彼のアカウントの権利を認める証明があること。


仮に、筆者の妻がこのすべてをクリアしたとしても、Googleの裁量でその要求を退けることも可能なのです。今ではGoogle側に、個人情報保護の正当な理由があります。Googleを知っている人には分かるでしょうが、筆者の妻は彼の殺人の罪で疑われるかもしれず(陪審員が一人も有罪としないとも限りませんし、可能性がないとは言い切れません)、妻のアクセスが犯罪捜査の邪魔をする可能性もあるとも言えるのです。

筆者の妻が、彼のGoogleアカウントのコンテンツを入手できたとしても、正式なアカウント所有者にはなれません。彼のアカウントからメールを送受信することもできないので、請求書などの必要な情報は自動的に彼のアカウントから妻のアカウントへと転送するように、設定するしかないのです。何度も言いますが、Google側に完全に正当な権利があります。しかし、ユーザが抱える現実的な問題とは大きくかけ離れており、Google Oauthを使ってアクセスできるようにするしかありません。

筆者の妻は、彼のGmailのメールのやりとりを見たいなんて、これっぽっちも思っていないそうですが、Picasaにある娘の写真にはかなり関心があるとか(特に彼がAndroidからGoogle+にアップロードしている写真に)。結局、彼の妻はそれを入手することはできますが、簡単なことではありませんし、間違いなく時間がかかるでしょう(規約違反をして彼になりすまさない限りは)。

筆者が、彼のデジタルデータへ妻にアクセスしてほしくないと思っている場合はどうでしょう? 間違いなくパスワードを遺言に残すなんてことはしないでしょうが、彼の法的な受取人として、アカウントのコンテンツを受け取ることができる可能性はなきにしもあらずです。妻がすばやく行動を起こせば(アカウントが自動消滅する9ヶ月の期限が来る前に)、彼が彼女に見せたくないと思っているデータにも、すべてアクセスすることができるかもしれません。そういった場合にはどうすればいいのでしょうか? 答えは簡単です。オンラインの貴重品も、リアルな貴重品と同じように扱いましょう

何か大事なデータがあるのであれば、車や家や証券、漫画のコレクションと同じように、自分の意思で譲渡ができるようにしておくのです。利用しているオンラインサービスでは、事前にデータの譲渡や受取人について承認するポリシーなどがあった方がいいでしょう。

これは絶望的な状況での事例ですが、時々お客さんとのやりとりに使っていたGmailアカウントのアクセス権を、自分のビジネスパートナーに渡さずに利用者が死んでしまったらどうなるでしょうか? それで事業が上手くいかなくなり、倒産の責任として会社の知的財産を、債権者が安く買い叩いてきたらどうなるでしょうか? 転ばぬ先の杖として、オンラインサービスのポリシーを知り、自分の死後のデータの所有に関することをきちんとしておくことは大事です

近い将来、デジタル相続人というような名前を使う日が来るかもしれません。自分のデータとアカウントのバックアップを行う計画は、しっかりと立てておいた方が良さそうです。

What Happens to My Gmail Account When I Die? | Backupify

Backupify(原文/訳:的野裕子)