「コードは財産にあたらず」:ゴールドマンサックス問題で米連邦裁が見解

米連邦裁判所は、米国の窃盗法においてはプログラムのコードは物質的実体を持たないため、財産とはみなされないとする見解を明らかにした。
「コードは財産にあたらず」:ゴールドマンサックス問題で米連邦裁が見解

今年2月、ゴールドマン・サックスから取引システム用のソースコードを盗み出した容疑に対する逆転判決を勝ち取った後、マンハッタンの連邦裁判所を出るセルゲイ・アレイニコフ氏。(写真:AP)

米投資銀行ゴールドマン・サックスでプログラマーとして働いていたセルゲイ・アレイニコフは、2009年に同社のコンピューターから高速な売買を可能にする取引用システムのソースコードをダウンロードしたとして、財産窃盗の容疑で逮捕された(日本語版記事)。しかし同氏に8年の懲役を命じたこの判決は、今年2月に覆される。そして2か月弱が経った米国時間11日、米連邦裁判所はこの件に関して、米国の窃盗法においてはプログラムのコードは物質的実体を持たないため、財産とはみなされないとする見解を明らかにした。

連邦第2巡回区控訴裁判所示した見解(PDF)は次の通り。

「ソースコードを手に入れた際、アレイニコフ氏はその“物理的支配”を手に入れたわけではない。そしてゴールドマン・サックスが取引システムを利用できなくなったわけでもない。そのため、同氏は連邦窃盗財産法(National Stolen Property Act)に違反したことにはならない」

また、この裁判に携わった3人の判事は、アレイニコフ氏が疑いをかけられたスパイ行為に関しても誤認であったと判断している。これは、問題のコードが州や国をまたいだ取引に利用するための設計になっていないためで、同氏が容疑をかけられ、有罪とされた経済スパイ法(Economic Espionage Act:EEA)の違反の要件を満たしていないという理由によるもの。連邦裁では、ゴールドマン・サックスの取引システムは州や国をまたいだ取引を目的として開発されたり据えられたわけではなく、また同社にはこのシステムを他社へ販売したりライセンス提供する意図もなかったということがわかったとしている。

さらに連邦裁は、今年2月にアレイニコフ氏の有罪を覆し、8年の懲役の1年目で同氏の身柄を開放した理由についても説明している。

今回の判決が出されたことで米連邦政府は今後、企業秘密の盗難に関してEEAを根拠に被疑者を罰することが難しくなるとみられる。

TEXT BY KIM ZETTER
TRANSLATION BY 中村航

WIRED NEWS 原文(English)
※この翻訳は抄訳です