「クリエイティブになりたい」、「クリエイティブな職に就きたい」と思ったことがある人はかなり多いかと思います。あるいは、これを読んでいるあなたは今もそう願い続けているかもしれません。

しかし、クリエイティブになりたい! と発言すること自体はそれほどクリエイティブなことでもなんでもありません。「どうやったらクリエイティブになれるのか?」、「そもそもクリエイティブとはなんぞや?」という質問を投げかけてみるのも大切です

そんな中で、数年前にネットで見つけたHugh MacLeod氏は、名刺の裏に一コママンガを描くという作品を作っている人で、それと同時に南アフリカのワインをアメリカに輸入する会社の社長さんでもあります。その彼が書いた「クリエイティブになる方法」という記事が本当に素晴らしいので、なかなかの長文ではありますが、今回はその一部を紹介致します。

 ■クリエイティブになる方法(by Hugh MacLeod)

1. 人の話なんか聞くな

あなたのアイデアの独創性が強ければ強いほど、ほとんどの人はあなたに有益なアドバイスを与えることができません。最初に私が名刺で作品を作るという仕組みを始めた頃、周りの人たちは「どうして市場にとってもっとわかりやすいことをやらないのか?」と不思議に思い、私の頭がおかしくなったのだと結論づけました。

アイデアが生まれた瞬間にはそれが良いかどうかはわかりません。それは自分にもわからなければ、他の誰にもわかりません。それが良いアイデアだと腹の底から信じられるかどうかです。ですが、感覚を信じるということはなかなか簡単なことではありません。感覚に対して我々が恐怖心を抱くのにはそういった理由があるのです。

親友に聞いてみてもなかなか良い答えは得られません。彼らにしてみても、助けの手を差し伸べたくないわけではないのですが、彼らがいかに努力をしても、あなたが考えていることの百万分の一も理解はできないのです。

それに、大きなアイデアはあなたを変えます。あなたの友人たちはあなたのことが好きですが、あなたに変わってほしいとは思っていません。あなたが変わると、彼らとあなたの関係も変わります。彼らは今のままで良いと思っているものです。

しかも、あなたが変わることによって彼らは何も得をしません。なので、あなたに変化をもたらす可能性のあるものすべてに否定的になりがちです。それが人間というものです。もし、あなたの友達が変わろうとしている場合、あなたもきっと同じことをするでしょう。良いアイデアは人間関係のパワーバランスを変化させます。だからこそ、良いアイデアは最初の段階では否定されるのです。

良いアイデアには重荷がついてくるがゆえに、良いアイデアを持っている人は少なくなります。そして、これに耐えられる人はほとんどいないのです。

2. アイデアが大きい必要はない、ただし自分のアイデアである必要はある

大きなアイデアと自分のアイデア、この2つは同じではありません。

3.時間をつぎ込め

価値のあることをやるには時間がかかります。成功した人と失敗した人を分ける要因の9割は「時間、努力、スタミナ」です。

「名刺に絵を描く、というあなたの作品のフォーマットはいたってシンプルですが、他の人がそれを真似するということが心配ではないのですか?」という質問をよく受けます。

私は「その人たちが自分より多くのマンガをより上手に描ければ心配にもなるかもしれません」と答えています。この名刺の裏にマンガを描くという行為を、私はもう何年も続けています。何千ものマンガを描いてきていて、何万時間の工数をかけてきているのです。

4. 誰か強力な人に見つけ出してもらうことが必要な計画は失敗する

人もモノも突然発見されたりはしません。物事はゆっくりと、確実に苦痛を伴った状態でしか進んで行きません。

5.自分の経験に対しての責任は自分で負え

自分がやっていることが良いのかどうか、意味があるのかどうか、やる価値があるのかどうかは誰にも判断できません。進むべき道が強引であれば強引であるほど、孤独感は強くなります。

6. 人間誰しもクリエイティブ

実は、みんながみんなクリエイティブです。誰もが幼稚園時代にはクレヨン一式を持っていて、それで何かを描いていました。

7. 日中の仕事をやめるな

8. 想像力を封じ込める会社が、想像力を称賛する会社に勝つ時代は終わっている

9. 誰もが自分だけのエベレストを持っている

頂上にたどり着けるかどうかが最大の問題ではなく、少しでも高いところへたどり着くために、全力を尽くしたことが一度でもあったかどうかが問題です。ベッドの上で死を待つ時に虚無感しかない...という状況を避けたいのであればの話ですが。

10. 才能がある人ほど道具に頼らない

デリのメニューの裏にマスターピースを書いたという人と会っても、さほど驚きはしないと思いますが、SOHOの拡張高い空間で高級なペンを使ってアンティークのデスクに腰掛けてマスターピースを書いたという人に会ったら、私はそれはそれは驚くことでしょう。創造力と道具の間には何の関連性もありません。

アーティストが作品作りに没頭し、成功を収めていくにつれて、使う道具の数は減って行く傾向にあります。どれが自分にとって必要なのかということがわかってくるからです。モノについて考えることは時間の無駄です。やるべきことが明確な場合、〆切が迫っている場合、金持ちのクライアントが一挙一動を見張っている場合、必要でない道具の使い方を学ぶのに時間を費やすというのは、どう考えても賢明なことではありません。

上等な道具を使うという行為は、とって後ろに隠れることができる柱でしかありません。だから二流のアートディレクターは最新のMacを持ち歩いているのです。だからハックライターは高性能のノートパソコンを必要とします。ダメなカメラマンほど素晴らしいデジタルカメラを持っているのです。無名な画家ほど、流行のエリアにある高級なスタジオを借ります。これらは、道具という柱の後ろに隠れているだけにすぎません。

柱は決して助けてくれず、妨げとなるだけです。柱が立派であればあるほど、人はそれに心理的に頼ろうとし、さらに柱によって進むべき道がぼやけてしまうのです

11. 人ごみの中で目立とうと思うな、人ごみ自体を避けろ

自分の作品を世に送り出す方法は作品と同じくらい独創的でなくてはなりません。作品は新しい市場を開拓する必要があるのです。二十数万人の若者たちが同じことをして奇跡を待っているのであれば、同じことをする意味なんてまったくありません。すべての既存のビジネスモデルはもはや正しくないのです。新しいビジネスモデルを見つけましょう。

12. 痛みを受け入れれば、それはあなたを傷つけない

必要とされる犠牲に伴う苦痛は、常に想像しているよりも大きいものです。辛いです、はっきり言って。しかし、クリエイティブなことをするということは、人生において最高の体験の一つです。実現できた時、その瞬間にすべてが報われることでしょう。もし実現できなかったとしても、そこから驚くべきこと、神秘的なこと、価値のあることを学ぶことができるはずです。そして、実現できなかったことによる傷よりも、チャンスが訪れていたことを知りながら実行しなかったことによる傷の方が、後々痛みます。

13. 自分の中身を誰かの外見と比べるな

14. 「早死に」は過大評価されすぎる

15. クリエイティブな人間がプロとして学ぶもっとも大切なことは、どこまでを引き受けて、どこからを断るかの赤い線を引くことだ

芸術を現金化した瞬間から苦しみは始まります。お金を必要とすればするほど、他人からの指示は多くなり、自分の意志での作成が困難になります。不本意なことをやらざるを得ない状況も増え、創作の喜びもそれに伴って減少します。それを踏まえて計画的に仕事をするべきです。

16. 世界は常に変化し続けている

17. メリットは買える、情熱は買えない

世界を変えたいと思っている人だけしか、世界を変えることはできません。みんなが世界を変えたいと思っているわけではないのです。

18. ウォータークーラーギャングを避けろ

「井戸端会議が好きな連中とはつきあうな」という意味です。

19. 自分の声で歌え

ピカソは色づけが苦手でした。ターナーは人の顔を描けませんでした。ソール・スタインバーグは写生が驚くほど下手でした。T.S.エリオットは、日中は別の仕事をしていました。ヘンリー・ミラーはひどく波のある作家でした。ボブ・ディランはギターも歌もひどいものです。

でも彼らは辞めませんでした。どうして彼らは辞めなかったのでしょう? それは私にはわかりません。逆にどうして辞める必要があるのでしょう?

20. 媒体にこだわるな

それぞれのメディアには長所と短所が必ずあります。それらは必ず共存しているので、どの媒体がどの媒体よりも優れている、というものでは決してありません。絵画は壁に飾られるだけですが、それが絵画の良さであり、また同時に欠点でもあります。映画は音と映像と音楽と演技のすべての要素が含まれますが、それが映画の良さであり、また同時に欠点でもあります。

21. 「売れ線狙いで売れる」と考えるのは、人が思うよりも難しい

22. 誰も親身になんてなってくれない、自分のためにやれ

みんな自分の人生で手がいっぱいです。あなたの本やペインティング、スクリーンプレイに対して(特にまだ商品化されていない場合)親身になって悩んでくれたりはしません。親身になってくれる人がいたとしても、その人たちは恐らくあなたの人生に必要な人たちではありません

23. 芸術vsビジネスの議論は時間の無駄

24. インスピレーションを見つけようと躍起になるな、じきにやってくる

25. 必殺技を持て

ピカソの作品はピカソにしか見えません。そして、ベートーベンの交響曲はベートーベンの交響曲にしか聞こえません。一流であるには、他の人にはできない自分らしさ、いわゆる自分だけの声のようなものを人に見せる術を習得する必要があります。

26. 心で書け

27. 認められるために最も効率的な方法は、認められることを必要としないこと

これは芸術でもビジネスでも同じです。愛でも、セックスでも同じです。手に入れる価値のあるもののほとんどすべてがそうです。

28. パワーは与えられるものではなく、借りてくるもの

29. どんな選択をしたところで年貢の納め時は確実にやってくる

30. クリエイティブでいることの最も困難な点は、それに慣れること

1989年の夏にロンドンで暮らしていたことがあるのですが、その時同じアパートの上の階に、映画監督であるティム・バートン氏が撮影で数ヶ月ほど滞在していました。それほど親しかったわけではないですが、若干のやり取りはあり、彼が近所付き合いをするにあたってとても感じの良い人だったので、彼にとっての自分もそうなろうと心がけていました。

当時大学生だった私は、コピーライターとして生計を立てたいと考えていました。そしてある晩、彼と彼の奥さんが夕食を食べに我が家にやってきました。会話の流れで私のキャリアについての話になり、クリエイティブなことを仕事にすることについて不安を感じている、という話をしたところ、ティムは私にこう言いました。

クリエイティブ病につける薬なんてないのだから、共存する方法を探した方がいい。」

これは本当に素晴らしいアドバイスでした。当時の自分にとってはもちろんのこと、今の自分にとっても。

原文サイトでは今はもう30までしか出ていませんが、以前は38まで掲載されていました。30以降は下記のような感じです。

31. 倹約家であれ

32. 自分とともに仕事を成長させろ

33. 貧乏は楽しくない

34. 趣味を仕事にする場合は気をつけろ

35. 無名でいられる時期を楽しめ

36. ブログを書け

37. 意味は拡大される、人は変われない

38. 夢が現実となったとき、それはもう夢ではない

中島らもさんが「芸術は場数だ!」という言葉を残していますが、結局のところクリエイティブになるための、そしてクリエイティブでい続けるための最良の方法はとにかくたくさんのアウトプットを続けていくことなのかもしれません

個人的には11. の「人ごみの中で目立とうと思うな、人ごみ自体を避けろ」という言葉を自分がやっていることに当てはめて考えてきたことが何度もあり、それによって救われたことも結構あった気がします。何はともあれ、オンリーワンイズナンバーワンですしね。

クリエイティブになりたいと思っている方は、一番最初にある「人の話なんか聞くな」と言う言葉の意味を良く噛みしめながら参考にしてみてください。ちなみに、この話は2009年に本としても出版されています(英文記事)。

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長文お疲れ様でした。Thanks for reading!

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