写真1●海底ケーブル敷設船「KDDI Pacific Link」から繰り出された海底ケーブルの陸揚げ風景
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写真2●陸揚げを記念してKDDI技術統括本部長の安田豊執行役員など関係者が海底ケーブル先端部にワインの洗礼
写真2●陸揚げを記念してKDDI技術統括本部長の安田豊執行役員など関係者が海底ケーブル先端部にワインの洗礼
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 KDDIとNECは2009年11月1日,KDDIや米Googleなど6社が出資する海底ケーブル敷設プロジェクト「Unity」の陸揚げの模様を報道陣に公開した(写真1)。陸揚げでは,沖合約2kmに停泊中の海底ケーブル敷設船からケーブルを繰り出し,KDDI千倉海底線中継所(千葉県南房総市千倉)内設備と接続。同年11月11日頃に約470km先の米国側ケーブルと融着後,テストを終える2010年春に運用を始める予定だ。

 Unityは2008年2月に,KDDI,インドBharti Airtel,マレーシアGlobal Transit,Google,香港Pacnet,シンガポールSingTelの6社が立ち上げた海底ケーブル敷設プロジェクト(関連記事)。敷設事業は米Tyco TelecommunicationsとNECが受注し,敷設が進められてきた(関連記事)。最大容量は4.8Tビット/秒(当初計画は7.68Tビット/秒)。5対の光ファイバで10Gビット/秒×96チャネルをDWDM(高密度波長分割多重)伝送する。米国側はカリフォルニア州ロサンゼルスが陸揚げ地点。そこから近隣のデータセンターまでの中継回線を含めた一体提供が特徴の一つである。「端局からデータセンターまでをバックホール込みで提供する」(KDDI ネットワーク技術本部長の渡辺文夫理事)ことで中継回線の費用を節約できるとする。

容量当たりのコストは最低クラス

 陸揚げを記念し,KDDI千倉海底線中継所そばの海岸でセレモニーを開催。関係者が次々と陸揚げした海底ケーブルの先端部にワインをかけ,Unityプロジェクトの節目を祝った(写真2)。

 陸揚げを記念したセレモニーの終了後,KDDIとNECおよびパックネットサービス・ジャパンが説明会を実施。KDDI技術統括本部長の安田豊執行役員は日米の基幹伝送路として「日本とアメリカ,そしてアジアにとって重要なプロジェクト」とUnityの位置付けを説明した。5対あるうちの2対の光ファイバを使用するPacnetの日本法人であるパックネットサービス・ジャパンの岡田智雄代表取締役会長は「Pacnetはアジア最大の容量を持つ事業者。さらにUnityを加えてアジアを結ぶ高品質のネットワークを構築したい」とユーザーとしての構想を語った。

 Unityは当初7.68Tビット/秒を最大容量とする計画だったが,最終的に4.8Tビット/秒に落ち着いた。KDDIの安田豊執行役員は「容量を減らしたのは技術的な理由ではない」とコメント。需要が容量をすぐに上回るわけではないとしながら,大勢として「国際的なデータセンター需要が増えるのは間違いない」(同氏)との見通しを述べた。また単なる容量増だけではなく,「最新の技術で敷設したUnityは,既設の海底ケーブルに比べると容量当たりのコストが格段に安い」(パックネットサービス・ジャパンの鳥谷哲生部長),「大容量を1カ所に集中するのはむしろ危険。耐障害性を考慮すると大事なのはルートの多さ」(KDDIの渡辺理事)という評価軸が重要という。