24日、ロシアの首都モスクワのドモジェドボ国際空港で爆弾テロが起き、25日夕方時点で死者35人、負傷者180人(26日に約110人と判明)、うち重体が40人という惨事となった。犯行声明は出ていないが、ロシア南部の北カフカス地方を拠点とする武装勢力の3人が容疑者として指名手配されている。

ロシア帝国時代に併合された北カフカス地方は様々な民族が入り混じるが、中でもイスラム教徒の多いチェチェン民族の反政府武装勢力は分離独立を目指し、これまで政府軍と2度の内戦を起こした。前プーチン大統領が内戦を鎮圧した後、現メドベージェフ大統領も強権的な手法でテロリスト掃討作戦を強化してきたが、イスラム過激派を中心とする武装勢力は国際組織とも連携して各地でテロを続けており、今回の事件で政権の安全保障対策の欠如が大きく露呈した形だ。

今年12月に下院選、来春に大統領選を控える現政権にとって痛手は大きく、ロシア市場でも株価や通貨が下落。主要国の首脳はテロへの強い非難声明を出したが、2014年に冬季五輪開催も控える同国に対し、安全保障面で国際社会の懸念が高まるのは必至だ。

世界各地でイスラム過激派のテロが続く中、国際社会と各国政府は協力して安全保障対策を続けるべきであるが、強権的な弾圧は憎しみの連鎖を生むだけだ。リバティ2月号の特集で述べた通り、根本的なイスラム社会との融和の道を模索しなくてはならない。(由)

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