理解されにくい片耳だけの難聴、聞きやすくする方法とは? 

難聴には様々な症状がありますが、片耳だけが聞こえない、あるいは聞こえにくいという「片耳難聴」と呼ばれる難聴があります。片耳難聴は医学的には「一側性(いっそくせい)難聴」、高度難聴の場合は「一側ろう」と呼ばれ、およそ1000人に1~2人がかかるといわれています。日本国内では30万人以上いると推定されています。

片耳難聴の原因

 片方の耳だけに難聴が発生する原因は様々で、先天性のものと後天性のものがあります

先天性の難聴は文字通り、持って生まれるものです。近年、「新生児聴覚スクリーニン」グの普及によって、毎年1,000人余りの難聴の乳児が発見されるようになったといわれています。難聴の程度は様々で、音は聞こえるものの言葉が曖昧に聞こえたり、騒音下では会話を聞き取れなかったりと、集団生活の適応に問題が生じる場合もあります

 ●後天性の片耳難聴の代表は、おたふくかぜ(ムンプス)の後遺症として起こる「ムンプス難聴」です。ムンプス難聴の発症年齢は、「就学前」と「30歳代の子育て世代」がピークです。予防接種を受けていない子どもがおたふくかぜにかかって発症するのと、おたふくかぜにかかった子の親が二次感染を起こすから、と推測されています。
おたふくかぜ予防のワクチンは任意接種となっているため、接種率は40%近くと低く*、周期的に流行が繰り返されています。ムンプス難聴は、治療の効果がほぼないといわれています。ワクチンで予防することが唯一の対策なのですが、広く知られてはいません。
おたふくかぜワクチンは任意接種で費用がかかりますが、接種費用の一部助成をしている自治体もありますので、小さい子供をもつ保護者の方は、予防接種による効果と副反応を理解したうえで、検討してみてください。
*https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkoka/121/9/121_1173/_pdf/-char/ja

その他「突発性難聴」や「メニエール病」、「中耳炎」等で、片耳だけが難聴になることがあります。また片耳難聴は時に、脳梗塞など命に係わる病気の初期症状の場合もあると言われています。そのため、早めに受診して原因を突き止め、治療してもらうことを心がけましょう

特に「突発性難聴」は、できれば1週間以内、遅くとも2週間以内に治療を開始してください。発症から時間が経過してしまうと、音を感じ取る細胞に致命的なダメージが生じて、聴力が戻りにくくなります。完治が難しい場合でも、治療により進行を遅らせたり、症状の改善が期待できるので、かならず医療機関を受診してください

片耳難聴の困りごと

片耳に難聴がある場合、「もう片方の耳は聞こえているんだから、大丈夫でしょ?」と、周囲から理解・配慮されにくいところがあります。ですが、片方の方向からの音が聞き取りづらいというのは、思っている以上に不便なものです主に困る場面は、次の3つです。

聞こえづらい耳の方向から話しかけられる時



何を言っているか聞き取りづらくなります。時には話しかけられても全く気付かずに、相手に「無視された」と思われたりなどの不便を感じることがあります。
「なぜ?片方は聞こえているじゃない?」と思うかもしれませんが、聞こえない方から来た音は、頭が妨げとなってしまって、反対側の聞こえる耳に届きにくくなるのです(頭部陰影効果)。

騒がしい環境で聞こえにくい

 騒がしい環境で会話をするのは、とても難しいものです。脳に入ってくる音声情報は、両耳が聞こえる人に比べて少なくなります。その少ない情報の中から、雑音と必要な会話を分離させて、なおかつ会話の内容を聞き分けなければいけないのです。この作業には集中力が必要になり、非常に気を使わなければいけません。
もともと人間には、雑音の中でも聞きたい音だけにフォーカスを当てることができる「カクテルパーティー効果」という便利な機能が備わっています。しかし、片耳難聴の場合、その効果が弱くなったり、まったく得られなくなったりして、騒がしい場面での聞き取りが難しくなります。

音がどこから来ているのかわからない

また、会話だけでなく、「寝るときに聞こえる耳が下になっていて、目覚ましの音が聞こえない」等、日常的な場面でいろいろ不便が生じます。さらに、健聴の人よりも聞き取りに集中しなければならないため、疲れやストレスを感じるなど、精神的な負担も大きいのです。

もっと重要なことに、音が来る方向がわかりづらいということは、道を歩いている時などに車の音などで危険を察知することにも影響が出ます。

また、会話だけでなく、「寝るときに聞こえる耳が下になっていて、目覚ましの音が聞こえない」等、日常的な場面でいろいろ不便が生じます。さらに、健聴の人よりも聞き取りに集中しなければならないため、疲れやストレスを感じるなど、精神的な負担も大きいのです。

周囲の人ができる配慮

片耳が難聴の方は、聞こえる方の耳を相手に向けるなどして、聞こえづらさに対応していることが多いようです。
しかし、話しかける側がちょっとした配慮をするだけで、よりコミュニケーションしやすい環境ができます。たとえば…

●聞こえる耳の方から話しかける
●騒がしい場所では近くではっきり話す
●声をかけても気づかない時は、肩をたたくなどのジェスチャーで気付かせる
●教室やオフィスなどでは、聞こえやすい位置に移動してもらう
●家族などでの食事の際は、座る席を選ぶ(顔が見やすく、会話をしやすい方向へ向いている席など)
●可能な場合静かな環境を作ったうえで、話しかける(テレビやラジオを消す、窓やドアを閉めるなど)

CROS/BiCROS補聴システムとは

シグニア補聴器は、このように片耳の聴力を失っている方や、左右で聴力差が大きい方のために、CROS(クロス)/BiCROS(バイクロス)補聴システムを提供しています。
「CROS/BiCROS補聴システム」は、聞こえない耳周辺の音を集め、聞こえる耳に転送して聞く方法です。このシステムでは、聞き取りができない耳に「CROS」という補聴器にそっくりの小さい装置を装用し、聞こえる(もしくは難聴が軽い)耳に補聴器を装用します。するとCROSに入った音は、電波によって反対側の補聴器に飛ばされ、補聴器がその音を聞こえる耳に届けます。

つまり、片方の耳だけで、両方の側からの音を聞くことができるのです。

片耳がほぼ健聴の場合は、補聴器からはCROSから転送された音が聞こえ、同時に耳せんを通して外界の音も聞こえます(CROSシステム)。
補聴器を着けている側の耳に難聴がある場合は、補聴器はCROSから転送された音と外界の音をミックスし、増幅して届けます(BiCROSシステム)。

どの補聴器がどのCROSの器種に対応しているのか、ぜひ下記の対応器種をご確認ください

CROS/BiCROS補聴システムのメリット

片耳難聴の場合、このシステムを利用すると様々なメリットがあります。CROSをつけることで聞こえる範囲が広がり、聞こえない方の音にも気づくことができます。例えば、運転中の同乗者の会話や、職場等での同僚の呼びかけ、スポーツ時のいろいろな方向からの声を聞き逃すことなく、もっと円滑なコミュニケーションが実現できます。

また、補聴器に比べるとCROSは比較的安価です。左右で聴力差が大きく、片耳が重度難聴で補聴器による改善が難しい方は、両耳に補聴器を装用するのではなく、片耳をCROSにする選択肢もあります。

CROSについてさらに詳しい情報が知りたい方は、まずお気軽に近くのシグニア補聴器販売店に相談してみてください。

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