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森山誠個展(6月17日で終了)

2006年06月20日 00時03分15秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 札幌在住、自由美術協会会員の森山さんの個展。室内に座る、ブレた人物を描いた「memory」6点と、テーブルの上の静物をモティーフに絵画空間を構築する「卓上」12点。
 つぎの画像は「卓上05-2」だが、手ぶれのためやや不鮮明な写真になってしまって、森山さんすいません。
         

 森山さんの絵については2年前の個展のときにくわしく論じており、あまりつけくわえることもありません。
 つまり、「卓上」シリーズにせよ「memory」シリーズにせよ、森山さんは、すくない要素で絵画空間を成立させようとしていること。
 にもかかわらず、筆者の目には、「memory」は、現代人の不安のようなものを反映し、「卓上」は、存在の不安みたいな根源的な内容をはらんでいるかのように見えることです。

 2年前に書いた文章を再録します。
「ものは、はっきり描かないほうがリアルに見える」
そう、森山さんは話します。
 森山さんの絵に登場する人物も、皿や瓶といった静物も、一見きわめてリアルに描かれているようで、同時に、荒っぽい筆触の感じられる描写だったり、細部がぼかされていたりします。
 とりわけ人物の場合、どこか風貌が作家本人を連想させる上、周囲の空間の空虚感(とはいえ森山さんは、なにも描かれていない空間を「持たせる」のがばつぐんに巧い人でもありますが)もてつだって、絵の中に「現代人の孤独」というような、いわば「文学的」な要素を読み取る人は多かったようです。
 しかし、森山さんは、そういう読み取られ方が本意ではなかったようで、あくまでじぶんの絵は造形を追究していることを述べていました。
 「卓上」は、人物を排して、静物とテーブルだけで絵画空間を構築しており、比ゆ的な読みをいっさい拒絶する強さにみちています。
 右上の「卓上03-3」にしても、或る程度リアルな筆致で描かれているのは、皿と緑色の瓶だけです。
 右上の緑は、もともと観葉植物だそうですが、完全にかたちは崩れ、もはや瓶の緑とひびきあっているという存在でしかありません。
 テーブルとおぼしき白い平面には、するどい線が縦横に走っています。
 そして背景は、白い平面の粗さと対照的に、ごくフラットに塗られています。これは、おなじ絵の具を何度も塗ることで得られる効果なんだそうです。
 そのふたつの空間がつくる対比は、鮮やかです。
 そして、白い平面などの上に走る線は、すべて一点に集中するようにひかれているそうです。「卓上03-3」であれば、画面の中心をなす緑色の瓶です。
 この「一点集中」は、他の絵でもおなじだそうです。
(中略)
「要素がすくなくなって、むしろ自由に描けます」
 引き算のすえの、ぎりぎりの努力の上に、森山さんの絵画世界はなりたっているといえるのではないでしょうか。
 

6月12日(月)-17日(土)10:00-18:00
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A

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2 コメント

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能弁な沈黙 (川上)
2006-06-20 01:39:17
森山さんの画面はおそらく次のような順序で形成されるものだと思います。

・グレー系(アンバー色味)、ホワイトの平滑な面

・形象の彩色

・削り取り(スクラッチング)、拭き取り(ワイピング)

・線描(線描筆、ナイフによる削り取り)

・スプレー(黒)



グレー系のマットな面は単なるモノクロームではなくアンバー系の色彩を施したようです。

また、黒い面はアイボリーブラックとランプブラックなどの「黒さ」の沈み込みを使い分けているようです。

重要なのは、大作の部分に僅かにスプレーを上がけしていることで画面に不思議な隠蔽感を醸し出しているように感じます。スプレーはエアブラシではなく普通のつや消しスプレー(黒)のように見えました。微かに吹き付けるとマットな面になりますし、少し密に吹き付けるとグロッシーの方向に振れます。このマットかグロスかという中間の艶が森山さんの神髄でしょう。

随分と多くの色彩を使っておりさらにそれを抑えた面ですが決して粉っぽくなくもちろん派手ではありません。しかし凛と締まった黒の面がむしろ他の色彩を際だたせているように感じます。
 (ねむいヤナイ@北海道美術ネット)
2006-06-20 09:45:27
川上さんこんにちは。

以前、森山さんから、2種の黒をつかいわけているという話を聞いたことがあるような…(記憶違いでしたらすいません)。

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