2009年09月13日

勝間和代でなく、高城剛を目指すべきかも 〜「サバイバル時代の海外旅行術」を読んで思う

「勝間和代」を目指さない〜なんてキャッチコピーの本「しがみつかない生き方―「ふつうの幸せ」を手に入れる10のルール」が売れてるそうだ。

私も、本屋でパラっと読んで見た。
一読して、すぐに、この本は「国家の品格」とかと同じように、早すぎる時代の流れに翻弄され、不安に陥っている人を「あなたは、今のあなたのままでいいんだよ」と慰撫するような本だと思った。

今の自分をあるがままで、「あなたは、今のあなたのままでいいんだよ」と受容して欲しい、というのは人類共通の欲望だから、こういう本が売れる理由はよく分かる。

だから、「しがみつかない生き方」を読んで、「心の底から安心」できる人は、そのまま今の生活を続け、そのまま、死んでいけばよいと思う。

ただ、こういう本を読んでも、「精神安定剤」(著者の香山リカは精神科医なのだから、彼女としては正しい仕事していると言えなくもない)にはなるだろうが、それ以上には全く、視界は開けないだろう。

日本人にとっての「普通の幸せ」というのは、世界レベルで見れば、目が眩み、喉から手が出るほど羨まれるレベルの生活水準なのだから・・。

上にいる人間を引きずり降ろしてでも、自分も、いい生活をしたい、という新興国の人たちの欲望は、これもまた「幸福追求の権利」であって、何人もそれを否定することはできない。


私が思うに、社会の中で満足して生活できない人間が存在する場合、その人の不満を解消する方法論は、基本的に下記の3つしかない。

1)自分を変えるか  (要するに、自己啓発)
2)社会を変えるか  (要するに、革命・政治参加)
3)自分の社会における立ち居地に関する見方・解釈を変えるか(要するに、宗教・セラピー)

とにかく、この3つしかないのだ。

たとえば、働いても、働いても全然、生活が楽にならない時給800円、月収15万円のフリーターな人がいたとしよう。

1)の典型が勝間和代。
「効率よく勉強し、スキルUPして給料の高い仕事をGETせよ!」 

2)の典型が湯浅誠。
「政府は、最低時給をUPして、憂いなく生活できる環境を戸整えるべきだ!日比谷でデモだ!」 

3)の典型が、今回の香山リカ。(「足るを知れ」という仏教の教えもココかな・・)

「エアコンの効いた部屋で生活し、飢餓状態ではないのだから、上ばかり見るな!普通の幸せを噛み締めろ!」

というようなことが、乱暴に要約した各人の主張になると思う。

しかし、ココに(1)の新種が現れたな・・と高城剛(本人BLOGはコチラ)の「サバイバル時代の海外旅行術」を読みながら、しみじみと感じた。

高城なら、自分を変えたり、社会を変えたりしなくてよい。
まずは居場所を変えて、「移動してみろ」と説くのではないだろうか。

サバイバル時代の海外旅行術 (光文社新書)サバイバル時代の海外旅行術 (光文社新書)
著者:高城剛
販売元:光文社
発売日:2009-08-18
おすすめ度:4.5
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内容(「BOOK」データベースより)
2006年の日本人海外旅行者数は世界第13位、日本の外国人旅行者受入数は30位。国際観光収入については23位と低迷。これでは、グローバル化の進む現代、日本が世界から取り残されてしまうのは火を見るより明らかだ。なぜ日本人は海外へ行こうとしないのか。それは、日本で発売されている「観光ガイド」が“使えない”ことが一つの原因ではないかと本書は考える。日々世界を飛び回り、現在はバルセロナに拠点を置いている著者が、長年の海外旅行経験で培ってきたスキルをはじめ、様々な便利グッズやデジタルメディアの知識をもとに、お金がないバックパッカーから富裕な高年齢層まで万人に役立つ、生きた知恵を伝授する。


彼の問題意識を序文から抜き出すとこうなる。

"ノマド"こそ人間本来の姿
ここではないどこかへ行ってみたい、という未知の場所とそこでの新たな出会いへの憧憬は人間なら誰もが持つ基本的な欲求です。実際にヒトは、人類史上ほとんどの間、移動生活を送ってきました。

〜中略〜

本書が掲げる最終的な目標は、「海外へ出て、自分の目で世界を見る」ということです。

〜中略〜

国家や組織が個人を守る時代は終わり、個人が自力で生き残る術を見つけなければならない現代は、いわば「サバイバル時代」と呼べるでしょう。


高城はまず、150冊以上も買ってきたヘビーユーザーとして、日本の海外旅行ガイドブックの代表格である「地球の歩き方」を厳しく批判する。

映画を見ないで映画の紹介を本に書いたら、大問題になるでしょう。しかし現地に行かずに、その紹介を本に書いても本に書いても問題にならないのが旅行ガイド業界なのです。
いまや世界的なリゾート地であるスペインのイビサ島が、ほとんど紹介さえれていない点を筆頭に、日本のガイドブックは、SIMフリーの携帯電話とインターネットと、格安航空会社が隆盛を極める21世紀の海外旅行事情に全くあっておらず、バブル以降の20年間ほとんど、進化していないと斬って捨てる。

そのうえで、具体的な旅行術の紹介へと移っていく。(ここらへん実践しているのが、クチだけの評論家ではない、彼の存在意義。)

時代はSOHOと呼ばれたスモールオフィスからモバイルオフィス、そしてついにトラベルオフィスの時代へと変わりつつあります。

〜中略〜

何が起こるか分からないこの不確実な時代に、最後に必要となるものは、どこでも仕事してやる!という根性だと思います。

デザインされたキレイなオフィスでないと仕事ができないという発想はきわめて20世紀的でオールドファッションです。


そして、こういう発言への裏打ちとして、アメリカ軍も使用しているという、太陽電池による発電シート(下記の画像&リンク先参照)を紹介したりするところが、彼の真骨頂だ。こういうガジェットのお陰で、彼は電気も届いていないようなところでも、仕事をするらしい。

soloarsheet


実は、私は高校生時代から、STUDIOVOICEに連載された高城剛のコラムを毎月、楽しみに読むような高城剛フォロワーだった。

当時はバブルの余韻が残るころ。高城は「俺は仕事の依頼が多すぎてとてもじゃないが家に帰る時間がない。そこで、ライトバンを改造し、車の後部にベッドを入れて寝てる。服は洗濯せずに、アパレルの友達から貰った物を着る。汚れたら捨てる。風呂は都心の高級サウナだ!」みたいなことを言っていた。この発言は、「東京に行く=スシ詰めの満員電車に耐える生活をする」と思っていた田舎の高校生である私のハートを鷲づかみにした。

「アイデアと移動距離とは比例する」とも、当時から断言していたように記憶する。そういう意味では、当時からブレていない人だと思う。

世の中的には、沢尻エリカのダンナ、ということなのだろうが、自分にとって、15年以上続けて、ある種のロールモデルになるような発言をしつづけたという意味で、自分自身が、頭で思っている以上に、実は惹かれいるのだな。。と再認識させられる読書であった。

また、今後の多くの私と同世代も、勝間和代ではなく、高城剛を目指すべきなのかもしれないな、とも思った。

「勉強だ!!スキルアップだ!」と言われても、ウンザリだけど、「旅しようぜ!」と言われたら、「それくらいなら、出来る」と思う人も多いはずだろう。それに、高城になるほうが、勝間になるよりも、ずっと楽しそうだ・・。

ちなみに高城剛の出身地は、葛飾・柴又。これは私にとってのもう一人のヒーローであり、永遠の旅人である「寅さん」の出身地でもある。

これだけ「旅だ旅だ!」と言っているのだから、高城もそのことは意識しているに違いない・・。

サバイバル時代の海外旅行術 (光文社新書)サバイバル時代の海外旅行術 (光文社新書)
著者:高城剛
販売元:光文社
発売日:2009-08-18
おすすめ度:4.5
クチコミを見る


それ以外の彼の著書。どれも面白いよ。
70円で飛行機に乗る方法 マイルを使わずとも超格安で旅行はできる  (宝島社新書)70円で飛行機に乗る方法 マイルを使わずとも超格安で旅行はできる (宝島社新書)
著者:高城 剛
販売元:宝島社
発売日:2008-06-07
おすすめ度:3.5
クチコミを見る

ヤバいぜっ!デジタル日本―ハイブリッド・スタイルのススメ (集英社新書)ヤバいぜっ!デジタル日本―ハイブリッド・スタイルのススメ (集英社新書)
著者:高城 剛
販売元:集英社
発売日:2006-06
おすすめ度:4.0
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GO!IBIZA楽園ガイド (光文社ブックス 87)GO!IBIZA楽園ガイド (光文社ブックス 87)
販売元:光文社
発売日:2009-04
おすすめ度:2.0
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サヴァイヴ!南国日本サヴァイヴ!南国日本
著者:高城 剛
販売元:集英社
発売日:2007-07
おすすめ度:3.0
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