卓袱台返し、若い方もけっこうご存じのようです。漫画からの教養なんですね。星飛雄馬のお父さんがひっくり返す、星飛雄馬のお父さんでなくても、お父さんが「こんなもの食えるかぁ!」とひっくり返す、折りたたみ式の脚のついた、丸や四角や長四角のちいさなテーブルです。

民主連合政権は、期待した料理(マニフェスト)を出さないということで、メディアはもう卓袱台に手をかけています。というか、私たちが手をかけている、とメディアはずいぶん前から言っています。もちろん、不足もあるでしょう。ビーフステーキかと思ったらメンチカツ、とか。つけ合わせが3種類かと思ったら2種類、とか。食べ飽きた料理がまだ出てる、とか。

だけど、マニフェストは4年かけて実現していく、ということでした。今はまだ、前政権が冷蔵庫に残していったものをやりくりして、ようやくここまで並べたところです。にもかかわらず、食べたこともない創作料理もいくつか出ています。ここで卓袱台をひっくり返すのは、早過ぎはしないでしょうか。こういうことを4年かけてやります、と約束した人に、じゃあお願いします、と言ったなら、こちらも4年は待つという約束をしたことにはならないでしょうか。

もちろん、これでは待ってもだめだ、と見切りをつけるべきばあいはあります。その兆候として、目下おおきな関心を集めているのが、普天間基地問題です。これをもって、もうだめだ、と言うメディアが多い。とくに、このあいだの核セキュリティサミットでの「非公式会談」について、ワシントンポスト紙のコラムを、これがとどめだとばかりに大騒ぎする。たかがコラムなのに、「ワシントンポスト紙は」と報道するのは歪曲です。悪意ある歪曲です。

そのアル・ケイメンという署名のある、4月14日の
コラムを見てみました。


  By far the biggest loser of the extravaganza was the hapless and (in the opinion of some Obama administration officials ) increasingly loopy Japanese Prime
Minister Yukio Hatoyama. He reportedly requested but got no bilat. The only
consolation prize was that he got an "unofficial" meeting during Monday night's
working dinner. Maybe somewhere between the main course and dessert?

  A rich man's son, Hatoyama has impressed Obama administration officials
with his unreliability on a major issue dividing Japan and the United States: the
future of a Marine Corps aor station in Okinawa.

  Hatoyama promised Obama twice that he'd solve the issue. According to a
long-standing agreement with Japan, the Futenma air base is supposed to be
moved to an isolated part of Okinawa. (It now sits in the middle of a city of more than 80,000.)

  But Hatoyama's party, the Democratic Party of Japan, said it wanted to
reexamine the agreement and to propose a different plan. It is supposed to do
that by May. So far,nothing has come in over the transom. Uh, Yukio, you're
supposed to be an ally, remember? Saved you countless billions with that
expensive U.S. nuclear umbrella? Still buy Toyotas and such?


英語は苦手ですが、訳してみます。


今回の核サミットの最大の敗者は、あわれで(複数のオバマ政権関係者によると)ますますクルクルパーぶりを発揮している日本の首相、鳩山由紀夫だ。報道によると、彼はオバマとの会談を希望して断られた。月曜の夜のワーキングディナーで「非公式」に会談できたのは、せめてものお情けだ。メインディッシュとデザートの間だったのか?

資産家の息子である鳩山は、米日の溝となっている主要な問題、つまり沖縄の海兵隊航空基地の今後について、まったく頼りにならないと、オバマ政権関係者をがっかりさせている。

鳩山はこれまでに二度オバマに、この問題の解決を約束した。長い年月をかけた日本との合意によれば、普天間航空基地は沖縄の辺鄙(へんぴ)な場所に移設されることになっていた。(現在は人口8万人以上の市の真ん中にある。)

しかし、鳩山が所属する日本の民主党は、この合意を見直し、別の計画を提案したいとしている。それは5月までに提示されることになっているが、いまのところはっきりとしたものは見えてこない。うーん、ユキオ、君は同盟国の首相だよね? 大枚かけたアメリカの核の傘の下でン千億貯め込んだんだよね? それでもまだ私たちがトヨタだのなんだのを買っているというのは、どうなんだろう?



最後の文のニュアンスがわかりません。「これでも読者のみなさん、まだトヨタだのなんだの買いますか?」でしょうか。こちらに、トバイアス・ハリスさんという方の、私の直訳よりこなれた訳がありました(語を付け足しすぎる気がしますが、きっと親切な方なのでしょう)。

ともあれ、いかがです? これが、アメリカの有力紙が鳩山首相を酷評した、と日本のメディアが騒いでいる元記事です。内容空疎でぞんざいな短文です。英語のニュアンスはよくわかりませんが、それでも、「資産家の息子」とか、「メインディッシュとデザートの間」とか、アメリカは核の傘にお金を使い、日本はそのおかげで儲けたとか、品性の賤(いやし)さはまぎれもないと思います。八つ当たり気味に不買運動を匂わせているのも、あさましい限りです。また、米政府筋がそそのかして書かせている節も見え隠れしています。つまり、米政府の利益を代弁しています。

こんな書き殴りの下品なコラムをさもごたいそうに取り上げて、「そら見たことか」と自国の首相への攻撃材料につかうメディアって、いったい誰のためのメディアなのでしょう。あなた方は米政府の側についているのですか、と問いたくなります。沖縄の人びとのために日米合意の再検討を提案している自国の首相を、ここを先途と後押しするのが、私たちの購読料でなりたっているメディアの役目ではないでしょうか。沖縄の新聞は、琉球新報も沖縄タイムズも、基地の桎梏(しっこく)からの解放を願う人びとの側に敢然と立って報道しています。なのに「中央」メディア(「全国メディア」とは敢えて言いません)ときたら。私は愛国心とか、あまり自覚しませんが、自分が愛国者なのではないかと思えてきました。

久しぶりにかっかしました。まだ本題に入っていませんが、それはまた書きます。

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