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4兆度・原子も溶ける超高温状態を実現 理研とKEKなど成功

» 2010年02月17日 07時00分 公開
[ITmedia]

 理化学研究所(理研)と高エネルギー加速器研究機構(KEK)を中心とする研究グループが、重イオン衝突型加速器を使い、約4兆度という超高温状態を実現することに成功したと発表した。原子核同士の衝突による高温で陽子や中性子が融解し、ビッグバン直後と同様の「クォーク・スープ」状態になっているという。

 米ブルックヘブン国立研究所の加速器「RHIC」を使って亜光速まで加速した金原子核同士の衝突により、約4兆度という超高温状態が作り出されていることを確認した。太陽中心部より10万倍も高く、実験室で実現した温度の最高記録を達成したという。

 高温物質の温度は、物質から放射される「熱的光子」とその発生量から測定できるが、熱的光子量の直接測定は難しい。このため、高エネルギーな光子の一部が電子・陽電子対に変換されることを利用し、測定した電子・陽電子対から理論に基づき元の光子の量とエネルギー分布を計算。理論予想と比較し、温度を推定した。

 約4兆度の状態では、元素を構成する陽子・中性子が溶け、クォークとグルーオンからなる「クォーク・グルーオン・プラズマ」(QGP)になっているという。QGPは高温・高密度で粘性がゼロという「完全液体」であり、ビッグバン直後の数十万分の1秒の間宇宙を満たしていたと考えられている、物質の始原の状態だ。QGPへの転移温度は約2兆度と推定されており、今回はそれより2倍の高温状態を作り出すことに成功した。

 研究結果は2月13〜16日に開催される米物理学会で報告するほか、米科学誌「Physical Review Letters」に近く掲載される。

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