京セラ、KDDI、そしてJAL――『稲盛和夫の実学』藤沢烈の3秒で読めるブックレビュー

経営破たんした日本航空。その経営を託されたのが、京セラやKDDIを育てた稲盛和夫氏。彼自身が語る経営哲学が『稲盛和夫の実学』に凝縮している。

» 2010年02月05日 08時00分 公開
[藤沢烈,Business Media 誠]
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 経営破たんした日本航空。その経営を託されたのが、京セラKDDIを育てた稲盛和夫氏である。その経営哲学について存分に伝えるベストセラー『稲盛和夫の実学』。稲盛氏自身が語る人間の本質に対する理解が具体的な経営方針に昇華していることが分かる。

素朴な真理を経営に活かす

 小学校で習うような素朴な倫理観から、稲盛氏は経営を見ているという。

  1. 誠実:会計・税務のルール上大事にされる利益よりも、自社のキャッシュを基本とする。月次の黒字赤字に一喜一憂せずに、ひとつの仕入にひとつの売上を対応させる。数字に踊らされずに、実態を誠実にとらえる経営を行うべきだという。
  2. 公正:購入者と支払者を分けるなど、権限がひとりに集中しないように図る。社内経理やコミュニケーションなど、社外ディスクロージャーを徹底して透明化を図る。公正さを意識することで、不正を防ぎ企業の健全な発展につなげることができるという。
  3. 努力:備品は中古品とし、固定費増大は常にチェック、必要なものだけ購入する筋肉質経営を行う。品質管理のように会計上の数字でも完璧主義を目指す。小グループ(アメーバ)単位で生産性の向上を徹底する。誠実・公正という基盤の上に、稲盛氏は努力を積み重ねる経営を行ってきた。

 誰でも分かる言葉を原理原則とした稲盛氏の経営。だからこそ、基本方針を曲げることなく京セラやKDDIは発展を遂げてきた。原理がねじまがりついに破たんした日本航空でも、稲盛氏が経営手腕を発揮することを期待したい。

著者紹介 藤沢烈(ふじさわ・れつ)

 RCF代表取締役。一橋大学卒業後、バー経営、マッキンゼーを経て独立。「100年続く事業を創る」をテーマに講演・コンサルティング活動に従事。創業前の若者に1億円投資するスキームを企画運営し、話題を呼ぶ。「雇われ経営参謀」として500人以上の経営・企業相談を受けてきた。ブログに毎日書評を掲載し、現在1200冊超。


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