雪街音楽メモ

聴いた音楽、気になった音楽、音楽の話題など、音楽のある日常を書きました。

マイケル・ジャクソン『THIS IS IT』は素晴らしかった。

  • サウンドトラック
    • 初回限定盤はCD2枚組(2枚目に未発表音源やマイケル自身による詩の朗読など)+35ページのロンドン公演リハーサルからの未発表ショット所収ブックレット付き。

マイケル・ジャクソン THIS IS IT(1枚組通常盤)

マイケル・ジャクソン THIS IS IT(1枚組通常盤)

  • 映画「THIS IS IT」DVD、ブルーレイ
    • 11/9時点では予約受付もまだ始まっていません。「ご注文受付開始時にEメールでお知らせ」の段階です。
    • 11/30追記 各種エディションやBOXとしてDVD、ブルーレイの発売が決定。発売予定日は2010年1月27日だそうです。映像特典付き。

映画『THIS IS IT』を見た。現在、当初2週間限定公開のところを11月27日までの4週間に延長されている。詳細は映画オフィシャルサイトでご確認ください。

コンサートの臨場感を味わえる。リハーサルや舞台裏の興味深い音楽作りの現場、マイケルとミュージシャン、スタッフたちの仕事ぶりと交流の様子、マイケルの人柄がうかがいしれる。

映画はロンドンのO2アリーナで今夏開催されるはずだったコンサート”THIS IS IT”のリハーサル映像と舞台裏で構成されている。ちまたの評判通り、大変素晴らしかった。

  • 本作は2009年4月から6月までの映像が収められている。マイケル急逝は2009年6月25日のことだった。
  • リハーサルとはいえ完成度の高いマイケルの歌、ダンス、サウンド
    • 実際のコンサートと同じセットリスト(曲順)で歌われる。
    • 「リハーサル」ということで、特にリハーサル期間初期の頃と思われる映像はマイケルは「のどを温め」たいがために軽くしか歌っていなかったりする。それでもじゅうぶん、聴くに値する歌声になっている。ダンスも全力ではなく軽く踊っているだけでも、それでも何か引きつけられる動きなのである。
    • ただ、リハーサルということを割り引いても、全盛期よりかはやや曲の最後のほうで動きが若干ゆっくりになるかなという変化は感じた。それでも切れ味鋭く、体のラインや動きは美しく、軽い。
  • ダンサーオーディションの様子や舞台裏の練習風景、ミュージシャンとスタッフやマイケルとの音楽に関するやりとりなど、音楽作りの現場が分かる。
    • わたしにはこの部分の映像がいちばん興味深かった。
    • この部分も含め全体をドキュメンタリー映像としても見ることが出来る。
    • ダンサーやミュージシャン、スタッフはマイケルとともに働けることを心から喜び、全力を尽くそうとしていた。マイケルを敬愛している様子が伝わってくる。
    • マイケルは謙虚で穏やかだが真摯な、時に厳しい音楽的要求を出す(それをしたあとは必ず相手と暖かい言葉を交わしてフォローする)。彼の考えとしては概ね、「演奏や歌はオリジナル通りに」「しかしそれ以上のものにする」「ファンが望むように」「シンプルに」といったこと。たとえば、凝ったコードを使うキーボード奏者に、「コードが違う。シンプルにしてほしい」と要求し、セブンスコード程度のものにその場で変更させる。しかしそう変更した方が、明らかに音楽の流れが良くなり、響きがすっきりしたのだった。
    • ほか、マイケルの出す音楽的要求は相手を高めるためのものだったようだ。相手の能力を高める、相手を光らせる、それによって全体が向上する、自分もさらに向上する。
    • 「ファンを非日常に、未知の領域に連れて行きたい」という願いがマイケルにはあったようだ。それは、自分たちの能力も未知の領域に向上させようとする取り組みでもあったように思う。
    • 「キング」と呼ばれるのはマイケルのこういう面があったからこそなのだろうと思わせた。
  • リハ初期の頃と思われる試行錯誤段階のリハ映像と、その後のの完成度の高くなっているリハ映像を交互に組み合わせるなどして、リハによってどのようにブラッシュアップされたかわかるよう編集上の工夫がなされている。
    • マイケルの私的な記録として記録されていたというリハーサル映像なのだが、ハイビジョン撮影等も入っており元々、後日なんらかの形での公開が考えられていたかもしれない。

マイケル・ジャクソンは自分が何をしたいか、どういうステージを作りたいかがはっきり分かっている。自分の歌のキーやテンポ、コードなどはすべてを把握している。彼がクリエイター、ダンサー、シンガーとしていかに卓抜していたかがはっきり理解できた。と同時に、彼がこの世にいないことを改めて悲しく残念に思う。どれほど大きな損失だったか。

マイケルの長いキャリア……

個人的には、ジャクソン5時代の歌をダンサーやミュージシャンたちと(つまり、ジャクソンファミリーとではなく)歌う、大人になったマイケルの姿が非常に感慨深かった。そのシーンではマイケルは歌うのを途中でやめ、コーラス側に回ってしまう。イヤー・モニターの音量の問題と、イヤー・モニターをつけて歌うことになれていない、そういうふうには育っていないから……といった会話をスタッフと交わす。そのあとリハーサルが続けられ、そのうちマイケルはイヤー・モニターを外したままきっちりと歌い始める。返しのスピーカーは数が少ないはずなのに。マイケルの長いキャリアと歩んできた道のりが感じられ泣きたいような気持ちになった。

映画予告編(英語)

YouTube

映画ウィジェット

  • TRAILER をクリックすると予告編(日本語字幕入り)が表示されます。さらに大きく見たい場合は上のYouTube映画オフィシャルサイト(日本語字幕入り)をどうぞ。
    • 「共有する」では、様々なブログやソーシャルネットワークに表示させるためのHTMLなどが表示されるようになっている。そういう時代なのだなあと改めて思う。

リハーサル動画

オリアンティ

マイケルの横でギターを弾いている金髪の若い女性ギタリストはオーストラリア出身24歳のオリアンティ・パナガリOrianthi Panagaris。下記はYouTubeでの彼女のオフィシャルページ。

彼女も映画の中で、「Beat It」「Black Or White」のギターソロでもっと目立つよう、光るようにマイケルから指示されるシーンがある。そのギターソロが彼女の見せ場であること、「僕が一緒についている」といった励まし。そこで彼女はバリバリとテクニックを使って弾いてみるのだが、マイケルは納得しない。「もっと高い音で、音を伸ばして」弾くように、と言葉を重ねる。そして彼女はそれをすると、実際、「Beat It」のラストにはふさわしい力強さと輝き、泣きの美しさが出てくる。限界を超えてさらに高みに引っ張り上げていく、マイケル自身もより高く行こうとする姿には本当に心打たれたし、音楽作りのエッセンスを見た思いもした。

ジュディス・ヒル

マイケルのバックコーラスの女性でデュエット・パートナーもつとめていたのはジュディス・ヒル Judith Hill。父親はミュージシャン。母親が日本人なので東洋的な顔立ちです。
マイケルの追悼式では大トリの「We Are The World」「Heal The World」のメインボーカルとして取り乱さず堂々と歌い、その歌声が全米の話題となってテレビ出演などが殺到。新曲も出すなどまさに「あの歌手、誰?」から人生が変わったとのこと。

この映画『THIS IS IT』をご覧になることをおすすめします。