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■亀井由利展~きらめく生命(いのち)のものがたり (2014年11月4~29日、札幌)=テキストを追加

2014年11月28日 21時47分10秒 | 展覧会の紹介-絵画、版画、イラスト
 札幌の画家、亀井由利さんが「きらめく生命(いのち)のものがたり」と題した個展を開いています。

 亀井さんの近作は、ドリッピングによる色とりどりの点を散らした抽象画です。
 ドリッピングといってもポロックなどの作品に比べると点が少し大きいようです。そして、色の対比と配置が見事で、流れる熔岩や川が心象を映し出しているように見えて、思わず引き込まれてしまいます。

 次は、ごく初期の作品。
 左が、1976年の「大陸の女」、右が78年「病める月」です。



 ある種のエキゾチシズムを感じさせますが、そんな一言で片付けられるような作品ではないでしょう。
 そういうのも、この2点は、亀井さんが、絵筆を執り始めた初期から、自分の中に「何かを描きたい衝動」を有していたことを、雄弁に物語っているように思えるからに、ほかなりません。

 とくに「病める月」。
 中東のモスクのある風景のようにも見えますが、どの建物も、屋根の上に避雷針のようなものが立ち、てっぺんには三日月がついています。こんな建築は、現実にはないでしょう。
 ベルベットブルーの夕空と、金色の三日月の対比も美しく、幻想性を高めています。

 そして、手前には、横たわる裸婦と、物憂げにすわる女性とが、重なり合うように描かれています。

 このモティーフについて、亀井さんご本人に訊けば、当時の思いを語ってくれることでしょうが、それがなくても、見る人が自由に思いを重ねることができます。誰しもが持つであろう、自分の心の二重性、あるいは、心と体のぎくしゃくした関係。
 いろいろと考えさせられる作品です。

「大陸の女」も、最近のことばでいえば「目力」が、すごいですね。

 彼女の、内心から沸きあがってくる心の叫びが、目もとにあらわれているようです。

 この目に比べれば、衣装もアクセサリーも、目線の引き立て役と感じられるほどです。


 その後、80年代の亀井さんは、花と裸婦という、わりと二科展にありがちなモティーフを経て、その甘さから脱却するような「心の叫び」を刻み込んだモノクロームの世界やオブジェ制作に移行し、そして現在の抽象画に至るわけですが、その経過の一端をのぞくことができる貴重な機会といえましょう。

 出品作は、次のとおり。
コンポジション

人の形
帰河
樹炎 II
樹炎 I
奔流 I
奔流 II
赤い湿原にて
波間にて
月影
かかえる 85
赤いアジサイ
飛翔
朱い街
病める月
大陸の女

ダンスダンスダンス A
ダンスダンスダンス B
二人
チクリル
生を得る I
生を得る II


2014年11月4日~29日(土)午前11時~午後6時、日月曜休み
ギャラリー北のモンパルナス(西区二十四軒4の3 清水マンション)

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・地下鉄東西線「琴似」駅5番出口から約390メートル、徒歩5分
・同「二十四軒」駅から約790メートル、徒歩10分
・JR琴似駅から約900メートル、徒歩12分

(カフェギャラリー北都館から歩いて2分ほどです)


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